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2019年は児童虐待・虐待死「取り組み元年」 (前編)民間発「ゼロ会議」 親を孤立させない社会作りを

2018年は3月に東京都目黒区で起こった船戸結愛さん死亡事件により、児童虐待が注目され始めました。

それでも悲しい虐待死はなくなることなく、2019年1月千葉県野田市で小学四年生栗原心愛(みあ)さんが実父からの虐待で亡くなりました。児童相談所の信じ難い落ち度により助けられなかった悲惨な事件でした。

児童虐待に注目が集まる中、2019年2月4日「虐待で亡くなる子どもをゼロにしたい」と大阪市で第一回ゼロ会議が開催されました。

2019年は児童虐待・虐待死への「取り組み元年」となります。ゼロ会議とは?児童虐待の現状や問題点を2話にわたり特集します。
(取材・文:浦邊 真理子)

 

ゼロ会議とは

 

児童虐待で亡くなる子どものニュースが絶えない中、「虐待で亡くなる子どもをゼロにしたい」と関西の35の民間団体が協力し、子育てや虐待の現状、悩みを聴き出す方法などを学び、悩みを抱え孤独な親たちを市民レベルで「付き合い」の延長で支援し、未然に防いでいこうという通り組みです。

2019年2月4日に大阪市内で行われた会議には、平日午後にも関わらずSNSや口コミで集まった約300名が集まりました。多くの人が「何とかしないと」と思っていることの現れと言えるでしょう。


【報道も多数詰め掛けた。注目の高さが伺える第一回ゼロ会議】

 

2017年に児童虐待で亡くなった児童数は全国で58人に上り、都道府県別では7人の大阪が最多となっています。

ゼロ会議は2021年までに虐待死ゼロ達成を目指しています。大阪府下で年に4回3ヶ月ごとに無料会議を開催し、広く虐待について「他人事」ではなく、我が身のこととして知ってもらい、我が事として通り組む社会を作ろうとしています。


【第一回ゼロ会議にて 代表 浜辺さん】

 

虐待死を防ぐ第一歩は「知ること」

 

第1回ゼロ会議では、自身も6年に及び虐待され、自身も3人の子育て経験もある一般社団法人児童虐待防止機構オレンジCAPO理事長であり、ゼロ会議運営委員会メンバーでもある島田妙子氏が講演を行いました。

自身の経験を包み隠さず披露し、当事者ならでは切実な話には、涙を流す人も続出しました。悲惨な体験談でしたが、「継母も被害者だった」「親も不幸だった」と事実に向き合ってきた被害者だからこその話は、深く突き刺さるものがありました。

今回の千葉県野田市女児虐待死の事件では、実父が加害者、母親はDV(※家庭内暴力 以下DV)を受け、恐怖し、その虐待から助けるどころか「見て見ぬふり」をし、ある意味の共犯状態であったとされています。多くの人が「母親も加害者同然で共犯だ」「子どもを連れて逃げなかった母親が悪い」との意見で、実際に死亡した娘への暴行を知りながらも止めなかったとして父親の逮捕後、母親も傷害容疑で逮捕されました。

正直に申しますと、筆者もこの会議に参加するまではそう思っていました。「自分の何よりもの宝なら自分が死んででも守るよね。母としてどうなの」と。しかし、島田妙子氏の話を聞き、「そんなことを言えるのは当事者じゃないからだ」と分かりました。「知る」ことで意識は変わると身をもって感じます。

誰にも助けて貰えなかったこの母親も、死亡した女児と共に被害者であり、更に娘を失い、犯罪者になり、一生責められ、さいなまれ、DVから逃れることができても、永遠に晴れる事のないこれからの人生、十字架を背負って生き続けるのです。

DV、モラハラ(※精神的DV・モラルハラスメント 以下モラハラ)の夫から、1歳の幼児と小学生を抱え、誰も知人のいない中逃げることがどれだけのことか、「この母親が弱かった」と片付けられるものではありません。

この事件で問題になっている児童相談所の対応にも言えます。確かに、子ども渾身のSOSの紙を、加害者である父親に渡すなど考えられない事です。

しかし、厚生労働省によると、児童相談所に寄せられる虐待相談の件数は年々増加し、児童相談件数は2013年から18年で1.8倍の13万3778件。2018年の1年間に警察が児童虐待の疑いで児童相談所に通告した子どもの数は過去最多8万104人で、この10年で約13倍にも増えています。児童虐待の摘発は1355件と、10年で約3.8倍と驚く数なのです。

厚生労働省による2017年度児童福祉司(ケースワーカー)の配置数は3235人で、児童福祉司1人当たりの児童虐待の相談対応件数は全国平均で40件程度とされています。

地域差はあるものの1人の児童福祉司が100件ほどの虐待案件を抱えているような場合もあります。誰も「死んでも仕方ない」と考えて適当に仕事をしている訳ではなく、悲惨なケースばかりの中、命の危険性の高い人から優先に対応し、手が回らない過酷な状態だと想像に難しくありません。

もっと増やしたらいいと思いますよね。しかし児童相談所の設置は法律で定められ、市町村で自由に建てられません。児童相談所数は全国212か所(平成30年10月1日現在)東京都で11ヶ所(最多)少ない所では2ヶ所という県もあります。

政府は去年7月、2022年度までに児童福祉司を約2000人増やすプランを決定していますが、虐待死の数は少し減るかもしれません。

しかしそれでは問題解決には繋がらないのです。児童虐待の原因は、児童相談所や児童福祉司の数が足りていないからではありません。市政に責任を押し付けるのは簡単ですが履き違えてはいけない問題です。

虐待は「明日は我が身」のこと

 

虐待が起こる背景として、親の孤立、育児の疲れ、両親の離婚、DV、貧困など様々な要因があり、一つの要因ではなく複合的に絡まり発生している場合が多くあります。

問題のある家庭だけに起こるように取られがちですが、「私も親に虐待されていた」「昔は手をあげる親が当たり前だった」なんて話は聞いた事がありませんか。

また、「こんな事言うつもりじゃなかった」「カッとして叩いてしまった」愛しい子どもの寝顔を見つめながら、涙を流し反省した経験はありませんか。

筆者も子育てを経験する中で、孤独、一人育児、未経験、疲れなどで子どもに怒り、暴言を吐いたことも、手を出したこともあります。

言ってはいけない事と分かりながら子どもが傷つくことを言う、怒りをコントロールできない自分にショックで、また自信を無くす。

育児はいつもギリギリです。暴言が一生の心の傷を与えてしまっているのかもしれない。少し加減を誤れば怪我をしていたかもしれない、虐待は他人事ではなくて「明日は我が身」のことなのだと、認識する必要があるのです。

母親支援という視点が足りていない現状

 

虐待・虐待死事件において親は加害者となります。死亡事件では父親が実質的加害者な場合が多いですが、止めなかった、共犯と見なされ母親も逮捕されているケースも少なくありません。

10年以上遡り、今までの自動虐待死を受けて出された市長や有識者などのコメントを調べました。皆一同に被害者の子どもを悼む決まり切った定型文のようなコメントと、業務の見直し、子どものための施策をうたうばかりです。

誰一人、「孤独な親を無くす」ことに言及していません。

「虐待がある」前提でのルールの取り決めに着手するばかりで、そもそも無くすための視点、行動がありません。

児童虐待を防ぐために一番必要なのは「親の支援」ではないでしょうか。親の心が不安定な時に虐待が発生する可能性が高くなる。こんな簡単なことに、ずっと目が向けられてきませんでした。

このゼロ会議は、虐待の防止には「親の支援」だと表明し行動を起こしました。


【第一回会議での浜辺さん、島田さん】

 

「子どもを見守る目以上に親を見守る目が少ない。みんなで寄り添ったらゼロにできるんだと実現させ、全国に広げたい」(ゼロ会議発起人 浜辺拡臣さん)「あの家のお母さん、お父さんどう?この子大丈夫かなとかいうアンテナは地域の人でしか立てていただけないので、私は虐待までいかなくても、感情に苦しむ親を助ける方が早いんじゃないのと」(島田妙子さん)

 

2019年は児童虐待・虐待死「取り組み元年」その取り組みは「被害の子ども」でなく、「虐待が発生している家庭」でもなく、「ギリギリの親」でもなく、「府・市民全員」に向けてです。3年間のプロジェクトが始まりました。

 

(後編へ続く)

 

ゼロ会議:URL https://www.ikuhaku.com/zero
お問い合わせ先:一般社団法人日本子育て制度機構内 ゼロ会議運営委員会事務局06-6282-7815(平日10時~19時)
ゼロ会議facebok ページ:https://www.facebook.com/zerokaigi/