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シングルマザーとその子どもの居場所WACCA チャリティショップとの協働で実現するたくさんのこと

WACCA(わっか)の存在を知ったのはクラウドファンディング(※「こんなモノやサービスを作りたい」「世の中の問題を、こんなふうに解決したい」といったアイデアやプロジェクトを持つ起案者が、インターネットサイトを通じて世の中に呼びかけ、共感した人から広く資金を集める方法)だった。

ひとり親、子どもの支援をクラウドファイティングで募るという新しさに興味を持った。募集していたのは「ウィメンズネットこうべ」というNPO法人。名前から「神戸市から委託を受けて支援を行っている団体だな」と思った。

真っ当にひとり親家庭に支援を行う団体はどこも運営資金難だ。ボランティア有志が行政から補助金や企業や個人からの寄付を受けて資金難の中、何とか運営している場合が多い。

しかしWACCAは何かが違うようだった。(取材・文 浦邊真理子)

 

ひとり親家庭の子どもにも「今日塾なの」と言える場所を

 

寒い1月のある朝、新長田駅に降り立った。阪神大震災で甚大な被害を受けた神戸市長田区は、復興後綺麗な街並みになり、駅前は1、2階が店舗で、上階は住宅と言う高層の建物が並んでいる。駅からその建物を通り、寒さも天候にも左右されずWACCAにたどり着く。

カフェか絵本屋、雑貨屋かと思うような雰囲気で、クラウドファイティングという「最先端」さからは想像できない外観に、思わず「可愛い!」と声が漏れた。


(画像:WACCA外観)

迎えてくださったのは、WACCAの茂木さん。中に入ると児童館のような雰囲気に机と椅子が並んでいる。


(画像:多目的スペース)

棚にはびっしり参考書、本がきっちりとならんでいる。机の上には消しゴムのカスが残っていて、子どもがここで勉強していた形跡がしっかり残っていた。


(画像:参考書が揃った本棚)

「ごめんなさいね。WACCA塾があったから」茂木さんが机を拭き、お茶を出してくれた。


(画像:お話を伺ったWACCA茂木さん)

WACCA塾は、ひとり親家庭の小・中学生が通う、無料の学習支援である。ひとり親家庭は貧困率も高く、収入と学力は比例しているデーターもある。

高額な塾代だけでなく、大黒柱であるシングルマザーは忙しく、母親は子どもの勉強を見きれない場合が多い、そして父親の不在、両親の喧嘩、DV、離婚、突然の環境の変化や貧困などから心に傷を受け、学校に行けない、勉強したくない、勉強がわからない、一般的な塾での指導とは異なった指導が必要とされる。

WACCA塾の授業は『言いたいことを吐き出す』ことから始まる。今日あったこと、学校のこと、ムカついたこと。学力をつけることには「自分が大事な存在」と思えることが必要不可欠である。「どうせ自分なんか…」の気持ちを無くすことからがWACCA塾の先生の役目なのだと言う。

講師は教師経験者、現役教師や医師、大学生ボランティアが中心で、どのような立場の人も、ここでは講師は皆横並びの「先生」。勉強だけを教えるのではないので、大変な任務である。


(画像:マンツーマンで授業を行う / WACCA提供)

目標は高校進学。昨年度は通う子ども全員が進学できた。生徒は約40名ほぼマンツーマンで指導している為、現在は週3回開催しているがキャンセル待ち状態である。

『学習支援』という名前に慣れていた私には『WACCA塾』と言う名前が新鮮だと伝えた。『子どもたちが 学校の友達に「今日塾やねん」って言えるような名前にしたの。』
優しさがあふれていた。

 

いつでも集まれる場所の必要性から誕生

 

「ウィメンズネットこうべ」は、地域貢献に取り組む女性リーダーに贈られる『チャンピョン・オブ・チェンジ』2018年度日本大賞に輝いた正井礼子氏が、女性のサポートのために1992年に立ち上げた認定NPO法人である。

阪神淡路大震災の直後にウィメンズが開設した「女性のための電話相談」に、夫からのDVに苦しむ相談が多く寄せられ、2004年に民間の緊急避難施設(以下 シェルター)を開いた。

しかしシェルターでは、その特性上「見つからないように」逃げて、隠れている場所なのでオープンに集まって交流はできない。しかし孤独、傷つき、悩んでいる女性やその子どもには話すこと、交流が必要で、退所後の生活再建に向けて、親子とも傷ついた心を癒す必要がある。

その必要性から、ひとり親家庭が交流できる拠点として「WACCA」が誕生した。


(画像:シングルマザーカフェ / WACCA提供)

親も子も気軽にふらっと来て、集まり、話し、助け合う家や学校、職場ではない第三の居場所。WACCA塾だけでなく、シングルマザーの資格取得や就職の為の勉強場所、雑談場所、様々なイベントやパーティ、毎月開催されているヨガなど、相談しやすい場所になっている。

取材時にも介護福祉の試験勉強に励みシングルマザーが黙々と勉強をしていた。このような場所があって、大人も子どもも「次への勇気」を持つことができる。

 

これが協働 あたらしい支援方法に希望を見た

 

クラウドファイティングで支援が集まっているのか伺った。私の予想と全く異なり「WACCA」は行政からの委託事業や補助金で運営しているのではなかった。NPO法人も数あれど、一般市民に運営方法までは分からない。(「ウィメンズネットこうべ」はシェルター事業で委託認定を受けています)

毎年、様々な基金や財団、企業などに働きかけ、審議やプレゼン発表、報告会を経て助成金や寄付を受け運営していると言う。人材不足のなかで支援活動を行いながら、大変な労力だと思うが、クラウドファイティングを始めたことも、支援を充実させ、継続的に行うためだった。

何よりも驚いたことには、NPO法人フリーヘルプとの連携によって、WACCAの家賃や光熱費など、もっともコストのかかる部分を、寄付金によってまかなっていると言う。フリーヘルプは「チャリティショップ」を展開し、ひとり親家庭や生活困窮者など、何らかの課題をかかえる人たちを支援する地域NPO法人との恊働事業の運営費となる。長田店はWACCAと同ビルにありスタート時から協働してきた。


(画像:店舗の前に掲げてある支援金報告の看板/WACCA提供)

「チャリティショップ」と聞いても、まだ日本人にはピンとこないであろう。不要品買い取り販売のリサイクルショップとは全く異なる「チャリティショップ」とは、一般の人たちから寄付された不要品を販売し、お客さんが購入すると、売上から一定額が寄付金になる。社会貢献に活用するしくみのお店を言う。

チャリティショップの利用者は、寄附する側も買い物する側も、特別な何かをしなくても間接的に社会貢献に参加することができるお店なのである。

いらない服はフリーヘルプに持っていけば無駄にならない、買い物するならフリーヘルプでしたら役に立つよね、と地域に自然と溶け込みながら良い影響を広げ、毎月10万円を超える寄附が実現している。まさに協働である。

寄附を受けたWACCAは、心に深い傷を抱え、孤独や絶望と闘っていたお母さんや子どもたちの居場所となり、実際に自立へ向け頑張る礎となっている。

阪神大震大震災の被災地であった神戸市長田区では、「困っている人に手を差しのべる」、「助け合う」ベースがあるのかもしれない。

しかし被災地だけでなく、チャリティショップのような自然に無理なく誰にでも簡単にできる支援が、ある一定地域だけでなく、日本全体で進むまなくてはならない。

 

夢のウィメンズハウスに向けて

 

「ウィメンズネットこうべ」が26年の間活動を続けたいま、たどり着いた一つの答えが「ウィメンズハウス」の設立だ。


(画像:夢のウィメンズハウス)

空きビルなどを借り受け、
① 居場所となるWACCA
② フリーヘルプが運営し、女性の勤務先となるチャリティショップ
③ 女性の勤務先兼、子ども達の安全な食を提供する子ども食堂
④ ウィメンズネット・こうべの事務所
⑤ シングルマザーの子育てを助ける保育ルーム
⑥ 居室(単身女性、シングルマザー対象)

これらを併せ持った、孤独しがちな女性や子どもの生活再建を支える複合施設が夢のウィメンズハウスである。桃源郷としてではなく、実現するのに必要なことは、ほんの少しの関心と支援だけだ。

 

 

問い合わせ先:認定NPO法人 女性と子供支援センター ウィメンズネットこうべTEL・FAX:078−734−1308
MAL:womans-net-kobe@nifty.com

 

・垂水〜三宮間で駅に近い空きビルの情報がございましたら提供ください。
・行政や企業の休眠施設の活用、不動産関連企業の社会貢献事業としてのご支援がありましたら上記お問い合わせ先までご連絡ください。
・認定NPO法人 ウィメンズネットこうべへお寄付や遺贈は寄付金控除の対象です。