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「親子で参加 体験型交流会」でひとり親家庭を支援していきたい

ひとり親家庭における困難は、まわりに相談できる人が少なく社会との断絶が生じやすいという点にある。そこでひとり親家庭が親子で参加できる「体験型交流会」に取り組み、その活動を通じて親子の交流だけではなく、ひとり家庭同士の交流を推進しているのが愛知県だ。愛知県のひとり親家庭の現状、およびその活動内容について愛知県 健康福祉部 児童家庭課の担当者に聞いた。(取材・文/編集部)


【左から愛知県 健康福祉部 児童家庭課 鵜飼さん、花村さん、杉江さん】

 

遺児手当の予算は18億円

 

―愛知県のひとり親家庭の現状をお聞かせください。

杉江さん 2015年の国勢調査が直近の数字になるのですが、それによると県内の母子世帯が40,919世帯です。そして父子世帯が4,852世帯、母子・父子をあわせると約45,000世帯です。

―愛知県におけるひとり親支援の予算規模は?

鵜飼さん 愛知県は「遺児手当」という個人給付の制度があり、予算額は18億円規模となります。この制度の始まりが1970年、ちょうど交通事故が増えている頃です。遺児の健全な育成と福祉のためにと設けられた制度を今も継続して行っています。1970年の事業開始ですからもう50年近くになります。

―当時は車を持つ人が増えて交通事故が多かったのですね。

鵜飼さん (愛知県建設部道路維持課HP「愛知県の交通事故の現状」の資料を見ながら)1969年に交通事故の死者数が過去最多になったとあります。遺児手当については過去の資料を見ても、制度発足についての経緯は分からない点が多いのですが、遺児手当という名前や時代背景からも、交通事故等によりひとり親になった遺児のために制度が立ち上がったのではないかと考えられます。

―遺児の数、つまり交通事故の件数は減ってきているのでしょうか。

鵜飼さん 減っていると聞いております。ですので、今この遺児手当を受ける方は死別よりも離婚の方が多いです。

花村さん 2018年6月末現在の統計では受給者数25,658人に対して、父母の離婚が理由の方が21,682人とほぼ9割を占めています。

―ひとり親家庭45,000世帯のうち6割くらいですね。それ以外の方というのは…。

鵜飼さん それ以外の方は経済的に自立している方か支給期間である5年を過ぎた方になりますね。遺児手当は、ひとり親になった直後の経済的に厳しい時期に支援する制度になっているため支給期間は5年間になっています。

 

ひとり親は依然として非正規雇用が多いのが現状

 

―5年を過ぎると経済的に自立できるものなのでしょうか。

鵜飼さん もちろん5年の間で経済的に自立される方もいます。ただお子さんが小さかったりすると正規職員になることが難しく、パートやアルバイトで働く方が多いです。そうするとどうしても収入が低くなりがちですので引き続き国制度の児童扶養手当を受給することになります。

花村さん 就業支援については、県から「愛知県母子寡婦福祉連合会」にひとり親の就労支援として無料職業紹介や就業支援講習会等の事業を委託しております。メール配信事業ではメールアドレスを登録していただくと、その人にあった仕事があれば自動的に求人情報が送られてくるようになっています。

―これはいわゆるハローワークとは違うひとり親家庭に特化した求人情報なのでしょうか。

杉江さん ハローワークと同じ部分もあるのですが、やはりこういった企業さんはひとり親家庭を理解したうえで求人を出していますね。

―企業サイドのひとり親家庭への認識や心構えというのは、昔と今とでは違いますか?

鵜飼さん 景気の情勢にも左右されるかと思いますが、他の自治体が実施される就職フェアなどを見てきた感想を申し上げますと、ひとり親の方が働くことを前提で参加している企業もありますね。

―そういう傾向は徐々に強くなっていると。

鵜飼さん 少しずつ理解が進んでいるのではないでしょうか。ひとり親であればお子さんの病気や学校行事等により、休むことが多くなりがちですが、他の方とのシフト調整で対応されるところもあると思います。さらに、お子さんが大きくなれば、休むことも少なくなり、他の方と同じように働ける環境になると思います。

―確かに昨今の働き方改革では、ある程度業務を分担してひとりひとりの負担を減らそうとしていますし、短時間でも複数人のチームで仕事をすればローテーションしてうまく回すことはできますよね。

鵜飼さん そのとおりだと思います。ただ、ひとり親の方の就業について一つ課題を挙げるとすれば非正規雇用が多いことです。先ほども申し上げたとおり、非正規雇用ですと休んだ分だけ給料が減額されたりします。

杉江さん 2016年度に愛知県で実施した実態調査では、母子家庭の9割以上が職に就いているという回答はあったのですが、そのうち正規職員は4割くらいにとどまっていて、半数以上は非正規職員でした。

―ちなみに正規で働いている4割の方というのは、なにか特別なスキルをお持ちなのでしょうか。

杉江さん 詳しくは調査していないのですが、正規雇用の方はお子さんの年齢が高い場合や他にお子さんの面倒を見てくれる人がいて、お母さん方が働きやすい環境なのかもしれません。

鵜飼さん これは国の制度ですが、各市町村であれば県に必ず母子父子自立支援員を配置していますので、ひとり親の方が就労や自立に向けて総合的な相談を受けたりすることは可能です。

杉江さん あとはキャリアカウンセリングですね。キャリアカウンセラーが、これからお母さん方が、育児や就労を含めてどういう生活設計をしていきたいかという相談に乗ってくれます。子供が小さいからと元々非正規を希望されるお母さんには、それにあった就職先を相談したり、必要なスキルに応じてパソコン講座など無料の講習会を紹介したりと一貫した仕組みになっています。

―ひとり親になった方は、すぐにこういった情報にたどり着けるものなのでしょうか。なにかあったらすぐに相談できたりとか。

鵜飼さん ひとり親になった時に離婚等の届を市町村に出しますと、住民票の担当から児童扶養手当やひとり親の支援を行っている児童福祉の窓口を案内されます。この窓口で「ひとり親家庭福祉制度のしおり」といった冊子をお渡しして説明していると思います。

―なるほど。手当や支援に関する情報は手続きと同時に入ってくる仕組みになっているんですね。

鵜飼さん はい。あとは、児童扶養手当を受給するために毎年1回所得等の調査(現況届)を出してもらうのですが、その際も先ほどの冊子の最新版をお渡ししています。さらに所得の聞き取りだけではなく、なにが支援として必要かということを話す面接の機会があります。国としても市町村窓口でひとり親の方から相談を受けた際には総合的に支援する体制を取ることを進めています。

―そういった支援は市町村から受けるものですからね。

鵜飼さん そうですね。ひとり親の方の支援について直接の窓口は市町村になりますね。

―市町村と連携を取って制度などの情報が必ず行き渡るような活動をされているということですが、愛知県独自の取り組みはなにかありますか?

花村さん 愛知県で独自に行っている取り組みについては、先ほどお話しした遺児手当になります。

―また、経済的支援として貸付事業がありますね。

杉江さん 国の事業ではありますが、母子父子寡婦の方の経済的自立の支援として貸付を行っております。貸付資金の種類はいろいろあるのですが、貸付の実績としては修学資金や就学支度資金というお子さんの入学・在学にかかる資金が大半を占めています。

鵜飼さん 大学に進学するには入学金や授業料等でお金がかかります。この貸付制度は保証人があれば利子が付かないので利用される方は多くいらっしゃいますね。

―奨学金が返せなくなるという話も聞きます。この制度の場合、種類によって無利子で最長20年と緩やかに返済ができるので心強いですね。

鵜飼さん この貸付制度は、ひとり親の経済状況も考慮した制度になっております。

―利用状況はどのような感じですか?

杉江さん 2017年度には80件の貸付実績があります。

 

フットサル、生物ふれあい等の「体験型交流会」に多くの方が参加

 

―愛知県母子寡婦福祉連合会(愛母連)について県との関わりをお聞かせください。

鵜飼さん 愛母連へは、先ほどお話しした無料職業紹介や就業支援講習会等の事業の委託を行っています。

―愛母連では名古屋グランパスのスタジアムへ招待するといったイベントをされていますね。

杉江さん そうですね。このようなイベントは団体で直接実施していると聞いております。

鵜飼さん このようなイベントについては、2018年度に初めて県でもモデル的に実施しております。

杉江さん ひとり親同士の交流と子どもの体験を兼ねた会で、10月から1月までの間に4回(フットサル体験、生物ふれあい体験、ものづくり体験、音楽体験)実施するのですが、応募人数が多いため、抽選で参加者を決めております。既に実施した体験型交流会での参加者アンケートの結果をみても、このような体験やスポーツの機会が少ないため、できるだけ参加したいという声をかなりいただいております。

―告知はどのようにされるのですか。

杉江さん (2018年)8月の児童扶養手当の現況届提出の際に市町村にお願いしてチラシを配布しました。


【「ひとり親家庭限定 親子で参加 体験型交流会チラシ」/愛知県ホームページより】

 

―抽選になったということは、今後は力をいれてイベント数を増やしていくのですか。

鵜飼さん この事業は、県で実施というより市町村単位で実施していただきたいと考えておりますので、まずは県がモデル的に実施して市町村に広めようということで企画しました。

―なるほど。県がモデルになって市町村に促すための実験的な取り組みなのですね。

杉江さん 企画当初はどれくらいのニーズがあるのかも分からなかったのですが、実際は数多くの申し込みがありました。それも踏まえて今後は市町村に働きかけができるかなと思っています。

―こういう事業が広まると、ひとり親家庭の方が孤立せずに皆と仲良くなったりとか横の連携も生まれそうですよね。皆で情報共有ができたら心強いですね。次に住居支援についてお聞かせください。市営住宅・県営住宅と別れていますが、どういう住み分けになっているのですか。

鵜飼さん 市営住宅と県営住宅では、とくに住み分けがあるとは聞いておりません。ひとり親の方については、県営住宅では福祉枠として1回多く抽選に参加でき、抽選の機会を増やして優先していると聞いております。

―DVのケアについてはどうでしょうか?

鵜飼さん 愛知県では女性相談センターでDV相談を担当しています。

―愛知県として市町村と協力体制をとっていくという意味も含め、今後ひとり親家庭に対してなにか検討していることはありますか。

杉江さん 先ほどお話しした体験型交流会も県がモデル的に行って、どんどん市町村に働きかけていきたいです。地域によってひとり親への支援事業の実施状況に違いがあるので、なるべく同じような支援がどこに住んでいても受けられるようにしたいと思っています。市町村の担当者に集まっていただいて、周りがどのように事業を実施しているのかを知る機会を設けるなど、事業を始めるきっかけや、内容についてイメージができると取り組みやすいかと思います。「このように実施すると良い」というような事例を市町村に提示することでひとり親への支援策を浸透させていきたいと考えています。