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それでも消えない漠然とした不安…… 自己肯定感を上げることで親子関係も楽しくなります

前回、しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事の丸山裕代さんに、シングルマザーのおカネに関する問題の具体的な解決方法や注意点をいくつか伺いました。しかし、ひとりで子育てをしていると、どんなに仕事をしていてもなにかしらの不安がつきまとい、ときには親子関係がぎくしゃくするようなこともあるでしょう。しかし、考え方ひとつで生活を楽しく変化させることができるのです。そこで今回は仕事や親子関係に関してメンタルをアップさせられる考え方をお伺いします。(取材・文/編集部)


【NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事 丸山裕代(まるやまひろよ)さん「お母さんが楽しく笑顔で過ごせば、自然とお子さんも楽しく生活できるようになります」】

キラキラしたスキルだけがスキルじゃない

 

―お子さんのために、収入をアップして貯金しようと正社員の仕事を探すシングルマザーも多いと思います。その一方で、児童扶養手当の支給額が減ることを気にしてパートやアルバイトのままでいる方もいるようです。

丸山さん 将来のことを考えると、目先の手当ての減額を気にするよりも収入アップをめざした方がいいんですよね。社会保険に加入するとたくさん引かれて手取りのおカネが減ってしまうと考える方もいます。しかし、たとえば国民健康保険は扶養家族の人数が増えれば保険料が上がりますし、具合が悪くなって仕事ができなくなったら収入は減ってしまいます。社会保険に加入できれば、子どもが何人いても保険料は同じですし、もしも病気やケガで長期休業をしなければならない場合、傷病手当金もあります。また、正社員になれば有給や昇給、ボーナスなどさまざまな手当てがあります。長い目で考えたときには、正社員でしっかり働いた方が得なことが多くあるんです。前回もお話ししましたが、正社員として働くほど時間的、体力的に余裕がないのであれば、まずはスキルアップのための資格を得たり勉強をしたりして少しずつフルタイム勤務で働ける準備をしておくのも大事なことだと思います。

―とはいえ、「自分にはスキルがない」「得意なことがない」「未経験」「自信がない」など、就職できるのか不安に思う方も多いようです。

丸山さん 国家資格を持っていたり、パソコンが得意だったり、英語が話せたり、とにかく“キラキラ”した何かを持っていることがスキルだと思っているお母さんが多いのですが、キラキラしたスキルだけがスキルではないんです。

―どういうことでしょうか。

丸山さん たとえば、「1日中机に向かってコツコツと計算することが好き」「ひとつの仕事を長く続けてきた」、こういったことも立派なスキルです。また、シングルマザーであることも立派なスキルです。1人で子育てをするためには、強い責任感やスケジュール管理能力などが必要ですよね。子どもが2~3人いれば、みんなが同時に話すことを聞き分けられる能力だってあると思います。1人で子育てしていることは大きなアピールポイントになりますよ。

―たしかにシングルマザーというだけでもスキルのひとつといえそうですね。しかし、やはり自分にどんな仕事が向いているのか分からないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

丸山さん 東京の場合は母子家庭等就業・自立支援センター「はあと」があり、適職診断なども行ってくれます。母子家庭に特化した相談ができるので利用しやすいのではないでしょうか。また、各自治体にあるマザーズハローワークやマザーズコーナーでは、仕事と子育ての両立を希望するお母さんに、職業相談や就職セミナー、育児に関する情報提供なども行いながら、就労の支援をしてくれています。マザーズハローワークであれば、専任の相談員がついてくれ、本人に適した仕事を一緒に見つけてくれます。ハローワークの場合、就職を希望する会社に自分では聞きにくいことを相談員に代わり聞いてもらうこともできます。そのようにして職員の方と相談しながら仕事を見つけていけると思います。

―しんぐるまざあず・ふぉーらむでも就労支援を行っていますよね。

丸山さん 「未来の扉」という就労支援を行っています。日本ロレアルと提携したシングルマザーキャリア支援プログラムで、5ヵ月間のプログラムを受けた後に、日本ロレアルの美容部員、人材派遣会社アデコのプロジェクトリーダー、あるいは派遣社員でオフィスワーカーなどになるための面接のチャンスを提供しています。「未来の扉」のプログラムを受講した後は、明るく前向きになる方が多くいらっしゃいます。ハローワークなどともに、こういった支援も利用してみてはどうでしょうか。

 

漠然とした不安をはっきりした不安に変える

 

―仕事をしっかりしていても、やはり将来のおカネに対する漠然とした不安を持つ人も多いような気もします。

丸山さん 漠然とした不安というのは、ずっとついてきてなくなりません。ですから、不安をはっきりさせることが重要なんです。たとえば、前回お話しした「20年表」を見て、いつまでにいくら貯金しなければいけないのかをはっきりさせる。こうするだけで、“どうすれば解消できるのか”という不安に変えることができます。人間の脳は、漠然としたことには答えは出さないけれど、はっきりしたことには答えを出すように自動的に動くようになっているようですよ。

―しっかり計画を立てるということは、精神的にも必要ということですね。

丸山さん 一方で、おカネに関してはあまり悩むことなく、「なんとなくこれくらいのおカネが入ってきて、なんとなくこれくらいのおカネが出ていって、なんとなくやってこれた」というお母さんもいます。ところが、その「なんとなく」では、入院や事故など何か突発的なことが起こったときに家計はたちまち立ち行かなくなってします。そのとき初めて「どうしよう」と不安になる。ですから、やはりライフプランやマネープランはしっかり作っておくほうがリスクを少なくすることができます。

―また、仕事を頑張りすぎるあまり、自分が疲れ、子どもとの関係もうまくいかなくなり、イライラした生活を送ってしまうというパターンもありますよね。

丸山さん ほとんどのお母さんがとにかく真面目で一生懸命なんですよね。だから、私は「不真面目になりましょう」「いい加減になりましょう」と声をかけているんです。「いい加減」とは、「良い加減」という意味にもとれますからね。「なんでもきちんとできるお母さん像」をみなさん思い描きますが、意外に子どもにとっては息苦しいものです。子どもは年齢を重ねてくると、だんだん思い通りにいかなくなるものです。反抗期は自立の証ととらえて「いよいよきたか、しめしめ」ぐらいに受け止められるといいかなと思います。思い通りにいかないことが当たり前と捉えて、柔軟性をもって対応していくことができれば、少しずつ状況は変わっていくと思いますよ。

 

わくわく楽しく過ごせることをベースに生活設計を組み立てる

 

―進学にあたっては、「友達がみんな大学に進学するから」といった理由で、なんとか周囲に合わせようと頑張ることもあります。

丸山さん 世間の枠に自分の子どもを当てはめようとすると、すごく苦しくなるし、お子さんもつらくなっていきます。ですから、生活をするうえで「自分と子どもが満足だと思うことはなんだろう」「譲れないことはなんだろう」「絶対に嫌なことはなんだろう」といったことを書き出してみるといいと思います。自分と子どもがハッピーであることを維持していくためにどうしたらいいかを考えれば、ほかと比較するという意識は薄れていくのではないでしょうか。

―お子さんが大きくなるほんの10年後でも、世の中がどう変わっているかは分かりませんからね。

丸山さん その通りです。ですから、進学をするにしても何をするにしても、お子さんとは「なぜ大学に行きたいのか」「なぜ、それをやりたいのか」などをしっかり話せるようにしておく必要があります。そうすれば、進学したいという結論が出たときには、お子さんも納得して福祉資金の貸付制度や奨学金制度を利用する責任をともに考えていくことができると思います。

―最後に、頑張るシングルマザーにメッセージをお願いします。

丸山さん お母さんとお子さんが生活していくうえで大切なことは、お母さんが楽しく笑顔で過ごすことです。そうすると自然とお子さんも楽しく生活できるようになります。まず「自分がわくわくして楽しく子どもと過ごせることはどんなことだろう」ということをベースに生活設計を組み立ててみてください。最初は難しいかもしれませんが、そう心がけていくうちに生活は自ずと楽しく充実したものになっていくと思いますよ。とにかく頑張り屋さんが多いので、肩の力を抜いて、手抜きできるところは手抜きをしながら、ご自分とお子さんが心地よいと思える「たったひとつのオリジナル」の家庭を作ってくださいね。

 

→→前回は、シングルマザーの大きな悩みの種であるおカネの問題について、収入アップの方法や貯金術をうかがいました。

 

 Profile

丸山 裕代(まるやま ひろよ)さん
NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事
産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/GCDFキャリアカウンセラー/社会福祉士

子どもが3歳のときにシングルマザーになり、現在はステップファミリーとして生活している。これまでに携わった仕事は20種類以上で、パート、アルバイト、派遣社員、正社員などすべての雇用形態経験。こういった経験を生かして、現在は公的機関の相談員や企業のキャリカウンセラーなどを行う。