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大阪市独自の支援制度と連携協定により、個々に寄り添った必要な支援を届ける

大阪市の離婚率は政令市第1位である。生活保護率は全国1位、生活困窮世帯を対象に学用品費などを支給する「就学援助」を受ける小中学生は4人に1人の25.7%(全て28年度)で、全国平均の約15%を大きく上回る。

子どもの学力テストでも調査が始まった平成19年度から一貫して小中ともに全国平均を下回っている。貧困率と学力は比例していて、親の経済状況で学力も低くなることはデータにも現れている。ひとり親家庭の貧困を考えると無視できない現状だ。

しかし、大阪市の長が変わり、少しずつ新風が吹き込まれているようだ。「子ども・ひとり親」への本気の改革が進められている。今年9月には「ひとり親家庭等の自立支援に関する連携協定」として3団体と初めての試みで連携協定が結ばれた。
大阪市こども青少年局子育て支援部こども家庭課の課長代理である中井重徳氏に協定を結んだ経緯、大阪市の取り組み、挑戦をうかがった。(取材・文/浦邊 真理子)

【協定書を手にする吉村大阪市長。左から、公益社団法人「大阪市ひとり親家庭福祉連合会」(北玲子会長)、吉村大阪市長、一般社団法人「日本シングルマザー支援協会」(江成道子代表理事)、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西」(山口絹子理事長)】

 

離婚率は政令市第1位。生活保護率は全国1位。ワーストを記録する大阪市の取り組み

 

―大阪市のひとり親家庭の現状を教えてください。

中井氏 大阪市における平成28年度の離婚件数は5,991件、政令市で比較すると横浜市に次いで2位ですが、離婚率は2.22%と1位、全国平均1.73%と比べても高い割合です。そしてひとり親家庭の多くが受給している児童扶養手当受給者数も29,255人で全世帯数に占める割合は2.0%とこちらも全国平均1.8%より高く、児童扶養手当受給者数・全世帯数に占める割合とも政令市第1位となっています。

平成28年6月から7月にかけて行った大阪市子どもの生活に関する実態調査では、大阪市の母子世帯は全世帯の約19%を占め、その母子世帯での困窮度が極めて高く、ふたり親世帯に比べ、母子世帯は「非正規群」(派遣社員やパートでの就労)の割合が、ふたり親世帯、父子世帯、その他の世帯に比べて群を抜いて高いことが分かりました。これらは母子家庭の貧困の原因と繋がっています。従って、子どもの将来のために貯蓄できていない家庭数も多いことがわかっています。

―この実態調査や学力調査の結果に、吉村洋文大阪市長は大変ショックを受け本気での改革をしなければならないとの想いを強め改革を進めてきたということですね。「親の経済格差が子どもの教育格差につながることがあってはならない」、「子どもの貧困対策や待機児童対策など、子どもへの投資にさらに力を入れていきたい」とし、子どもの成長を社会全体で支えるため、NPOや市民団体などと連携して、子どもの貧困対策を本格的に実施する事を明らかにしていました。

形になった一つが、今年9月に一般社団法人日本シングルマザー支援協会・公益社団法人 大阪市ひとり親家庭福祉連合会・特定非営利活動(NPO)法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西との「ひとり親家庭等の自立支援に関する連携協定」と思うのですが今回の協定はどのような経緯で結んだのでしょうか。

【平成30年9月4日に大阪市役所で行われた、ひとり親家庭等の自立支援に関する連携協定締結式】

 

中井氏 本市ではここ数年、こどもの貧困対策としてひとり親家庭への自立支援施策をかなり充実させてきました。しかしせっかくの支援策も利用者に届かなければ意味がありません。横浜市で同様の連携協定があったことを知り、民と官が協力してより幅広い層へ周知を行っていく必要性を感じました。大阪市ではより多くの企業やNPO法人などと連携を結ぶことにより社会全体でひとり親を支えていく機運が高まるようにとの思いから、公募を行い、応募の中からヒアリングや審査を経て連携協定を結びました。

民間と連携することについて、大阪市でできないこと、足りないところで、民間でフォローできる所を協力しあって解決につなげていくという試みです。市から情報を提供し、紹介することによって、個々のケースに寄り添った支援が可能になります。金銭的な悩みや精神的な悩み、就労の悩みも適切に解決に結びつけて行くことができます。市からの紹介ということで、当事者も安心して相談できるようになると考えています。

―行政は福祉寄りで、元気で働けると門前払い、難しい言葉や漢字が並んだ書面はわかりづらく、役所へいく時間もない、待たされる等「身近ではない」イメージが未だにありますが、この協定で変わるのでしょうか。

中井氏 行政としては、来てもらい申請してもらって…という面があるのは事実です。また、今までは特定の民間団体を紹介することも難しい面がありました。しかし、この協定によって、民間団体に相談に行かれた方や困っている人に対して、今どういう支援があって、どういうことをしてもらえるのか、こんな支援団体があります、仕事なら支援団体に強いこの団体へ、とお繋ぎできるようになりました。

―それは利用者にとっても、支援団体にとっても、大阪市にとっても良いことですね。

大阪市独自で本気の支援を。ひとり親家庭への自立支援施策の取り組み

【協定書に署名をする吉村大阪市長】

 

―協定を結ぶ前にはどのような取り組みをされていたのでしょうか。

中井氏 大阪市では各区役所に“ひとり親家庭サポーター”という専門の相談員を配置し、ひとり親家庭の就業や自立支援に関する相談を受けています。平成26年度からは相談員を増やし各区役所で週に2回相談窓口を開設し、土曜日や訪問相談も行っています。また離婚前の相談にも対応しており、近年はその離婚前の相談件数がかなり伸びています。

―「離婚するにはどうしたらいいの」、「離婚するとどうなるの、何をすればいいの」等、情報は離婚する前に欲しいのに、今までは「大変なのは分かるけれど役所には、離婚してから来て下さい」という行政のスタイルでした。

中井氏 大阪市は養育費を受け取っている方が非常に少なく、平成28年度から弁護士による「離婚・養育費」に関する無料の専門相談を新たに開始しました。各区で年2回、大阪市全体で年に48回ですので、概ね週1回どこかの区で開催していることになります。大阪市民であれば自分の住んでいる区以外の区で開催する無料相談でも受けることができます。

―離婚時に弁護士に相談したくても、実際には費用面が心配で相談することはなかなかできません。ハードルがとても高いことを無料で年に48回も開催してくれているのは心強いですね。

中井氏 実態調査でもひとり親家庭の貧困、非正規雇用、不安定な収入が大きな問題とわかっているので、特に就労支援には力を入れています。看護師や保育士など就職や転職に有利な資格を取得するために専門学校に通っている方に訓練促進費用を支給していますが、その額を非課税世帯の方を対象に大阪市独自で月額10万円から14万1千円に引き上げました。

また、専門学校に通う間、保育所に入所しやすくするためのポイントも増やしました。さらに、その専門学校に入学するために学力面や金銭面のサポートを必要としている方もいることから、専門学校入学のための受験対策講座を託児所付きで開設したり、予備校に通う費用を補助することも新たに開始しました。次に、学びなおしの支援として、高等学校卒業程度認定試験の合格支援に係る給付金を大阪市独自で6割補助から10割補助へと引き上げました。これら拡充した取り組みを平成30年度から行っています。

―全額負担に加えて、受験対策講座を市が開催してくれているのは新しい取り組みですね!

中井氏 大阪市ではこれらの取り組みを含めたひとり親家庭に必要な情報を一冊にまとめたサポートブックなどを作成配布したり、養育費の取り決めや受給率を高めるために、区役所に離婚届を取りに来た方に国が作成した養育費を取り決めるための参考書式が掲載されているパンフレットとは別に、大阪市が独自に作成した養育費のことを分かりやすく掲載したパンフレットをお渡ししています。

―色々な支援事業を行っても、その情報が利用者に届いていなければ意味がないと思います。そのためにどうされていますか。

中井氏 私たちも役所の窓口や関係機関でのパンフレットの配布だけではなかなか周知してもらえないと感じており、連携協定を結んだ団体からも情報提供をしてもらうことによって、必要な人へ必要な情報が届き、さらなる寄り添った支援が可能になると期待しています。

―私たちも大阪市の取り組みが広く伝わり、利用するべき人が、適正に利用してもらいたいと思います。これからも更なる改革を進めて頂きたいです。ありがとうございました。

 

問い合わせ先:大阪市こども青少年局子育て支援部こども家庭課
TEL 06-6208-8034
E-mail fb0008@city.osaka.lg.jp