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送迎託児の頼り合い、子育てシェア『AsMama』で実現する 頼り合える社会

ひとりで子育てに奮闘する日々、「こんな時に誰かいたら…」そんなシーンは常にありますよね。周りの目や批判も気にせず、安価で信頼できる人に気軽に頼める。そして子どもも安心できる居場所ができ、喜び学び楽しめる。

シングルファミリーだけでなく、子育て家庭にこれ以上のサービスがあるでしょうか? 昔の近所付き合いのようでいて、現代の「シェア」の時代に合った全く新しい「共助」サービス。広がりを見せる「AsMama」代表の甲田さんにお話を伺いました。

子育ては頼りあった方が子どもにも、親にも地域にもプラスになる。AsMamaで見つける「子育てのシェア」で「頼れる社会」を当たり前に

―なぜこのサービスを始められたのでしょうか。

甲田さん 私たちは、「子育てシェア」というインターネット上のオンランサービスを提供しながら、子育て世帯にとって信用できる生活や子育てに役立つ情報を提供する機会をつくりたいということで、年間約2,000回の地域交流イベントを全国で開催しています。この地域交流イベントを通じて、「子育てシェア」の利用方法を広めたり、積極的に子育て世帯を支援したいと思っている企業や団体、活動している人たちを知ってもらう取り組みを行なっています。

もともと私はキャリア志向が強くて、いかに自分の地位や給料を上げるかと、昼夜関係なく働いていましたが、ある日突然、リーマンショックの翌年に業績不振による会社都合で退職せざるを得なくなりました。

―お子様は?

甲田さん 娘が一人います。

―キャリア志向で、色々犠牲にして頑張ってきたのに、その結果は残酷ですね。

甲田さん 子どもが生まれてからも、何とか人に預けながらやってきました。夜間保育、ベビーシッター、ファミリーサポート、民間学童、いくつも利用していました。

子どもを幼稚園に迎えに行って、ベビーシッターに預けて、またタクシーでそのまま会社に戻って仕事をすることは日常茶飯事。お給料よりも保育園とベビーシッター代を足したほうが高く、そこまでして働いて、一体この先どうなるのかと自分の人生を考え始めました。また、娘を見ていると、小学校1年生になったら急に集団生活が始まりますよね。それにもかかわらず、学校が終わって、学童でまた別の集団で過ごす事になります。小学校になると、私は宿題をやらなければならない、私は習い事に行かなければならない、私は体を使って遊びたいと家庭によってバラバラですよね。それなのに、みんなで1つのことをやりましょうという時間が1日8時間続く事は、体力的にも精神的にもしんどいんだろうなと思いました。

シッターさんにしても、いつも同じ方にお願いする事は難しく、民間の学童もいつも同じ方と過ごせるわけではありません。親の都合で知らない人のところに右から左に預けられるのは、子どもにとって健全な育成環境なんだろうか、子どもも落ち着かないだろうなと考えたとき、もっと身近に友達の家に遊びにいく感覚で子どもを預かってくれるような環境があれば、子どももしんどい思いをせず、親も働きやすい環境ができるだろうと考えました。

―世の中の働くお母さん共通の想いですよね。

甲田さん これから女性進出も増える中で、子育て世帯を支援したいと思ったときに、ベビーシッターを使えるような世帯の方は、ベビーシッターを利用すれば良いけれど、今7人に1人が貧困の家庭といわれているような社会の中で、バス・電車に乗るような感覚で送迎や託児を身近な人と頼り合い、女性が働けるような環境を日本全体でつくっていかないと、世帯収入はますます低下し、子どもの貧困につながると思いませんか。

そうならないように、シングルファミリー支援というところもアズママが目指している事業体の1つです。

シングルファミリーも含めて、働きたい人が働き続けられるような環境、インフラをどうやって整えるかにチャレンジしています

 

―「子育てシェア」とはどういうシステムか教えてください。

甲田さん 「子育てシェア」は、アプリからインターネットを使用し、送迎・託児を友だちや近所の顔見知り同士で頼りあう仕組みです。お預かりものみでもOKですし、子どもの食事や、お風呂に入れてもらうことも同時にお願いできるようになっています。

気軽に利用できるように、登録料や手数料は一切無料です。万が一、事故や物損トラブルを起こしてしまったときに備えて、全支援者に保険が適用されるという、日本で唯一の仕組みになっています。

預ける一方で気兼ねするということがないよう一時間500円~、食事は300円、おやつは150円、お風呂は300円というように謝礼ルールを決めています。謝礼金のやり取りは、直接現金での支払いか、クレジットカード決済を利用者が選べるようになっています。

例えば私の娘の場合、学校にお迎えに行ってもらってそのまま塾に送迎をして頂き、塾からの帰りはバスに乗せてもらうので、支援者さんと直接お会いする事が出来ません。このようなケースでは送りの500円と、帰りの500円、合計1,000円をクレジットカード決済を利用してお支払いをしています。(※現金での支払いも選択できます。)

―無料だと返って手土産を用意しないとなど気を遣ってしまうし、次回頼みづらくなるので、利用しやすい金額設定はありがたいですね。

甲田さん そうですね。塾や幼稚園の送迎を輪番制でされている方は「月曜日は私が送迎するので、水曜日よろしくお願いします」と言って、お金のやり取りがないこともありますが、とはいえ何かあったときに保険を適用するために「子育てシェア」を利用している方もいらっしゃいます。

―すごく良いサービスだと思うのですが、どのように利用できるのでしょうか。

甲田さん 最近のSNSでは簡単につながり、友人はないですか?とシステムが自動検出しますよね。「子育てシェア」では、知らない人と勝手につながって、子どもを預けることが出来ないよう、リコメンド機能はつけていませんので、自動的に広がらない仕組みになっています。

―それは安心ですね。

甲田さん つながりを広げる方法は3つしかなくて、1つは、登録したら自分でホームページを見て使い方を熟知し、顔見知りの人を招待する形でないと使えないということを理解したうえで、知人や友人に「登録料も手数料も一切かからない仕組みなので、登録したら自分に友達申請を送ってください」と依頼します。申請を受けた方は、相手の携帯番号下4桁を入力する事で承認されて、つながる事ができます。

―もともと知り合い同士というパターンですね。

甲田さん はい、幼稚園の友達や、近所の知り合いと自らつながって行くというのが1つ目です。

2つ目は、全国に700人弱程活動をしているAsMamaで認定を受けたママサポ(AsMama認定サポーターの略称)にコンタクトをしてつながりを持つ方法です。

子育てシェアに登録すると、このママサポに限り、全国どこにどんな人が住んでいるのか見えるようになっていますので、近くのママサポに「実は、送迎や託児で困っているので、一度面談してもらえませんか」と自分からアプローチをして顔見しりになって預けるという方法があります。

ママサポは、育児中のお母さんだけでなく、子育てを支援したいという思いのある学生やシニアの方、もともと保育園の先生や小学校の先生をされていたような有資格者も4割ほどいらっしゃいます。この方々が、口コミやSNSで「子育てシェア」をPRしたり、自主的な交流イベントを開催し、イベント現場での友達づくりのお手伝いを全国で約2,000回開催しています。

3つ目は、ママサポたちが開催している交流会に参加し、近いところに住んでいる人とつながるという方法です。ママサポは、コミュニケーション研修を受けていて、友達仲人番のような役割もしています。交流会では、子育てシェアの登録の仕方から、頼りたい人と頼られたい人のマッチングをその場で行っていますので、AsMamaのイベントに行けば頼り合える友達を作ることが可能です。

現在子育てシェアに登録している会員数は約5万7千人。イベントに参加してくださっている方は年間30万人程になりますが、イベントだけでなくママサポが日々口コミ活動でお声掛けをしている人たちはのべ500万人にもなります。

―もともと知り合いであれば自分で直接頼むこともできると思うのですが、「子育てシェア」を利用する目的、意味は何なのでしょうか。

甲田さん 私も経験して分かったのですが、知り合いだと、“なあなあな関係”になってしまうというのもありますし、1人ずつお願いをしなければならないケースがほとんどです。例えば、「すみませんが田中さん都合つきますか?」「すみません、高橋さん都合つきますか?」というように、何人にも謝り、声をかけ、断られるとそのたびに心がポキポキ折れて、申し訳ない気分になってしまいます。

特にシングルファミリーの方の場合、人に迷惑をかけてはいけない、ちゃんとやらなきゃいけないと思っている方が多いので、人にお願いするときはなるべく気兼ねしないようにお願いしたいと思っているはずです。「あの人、また?」というように思われたくない気持ちがありますよね。

この仕組みを使うと、お願いしたい場所から半径5キロ、10キロ、というように、自分が指定したエリアの人たちに一斉に支援依頼を発信できるのですが、BCC(※同じメールを複数の送信先に送るときに、受信者に他に送っていることが分からないようにするメールシステム)で送っているような仕組みなので、誰にお願い発信をしているのかは他の人には見えません。また、誰に依頼が確定したのかも分からないようになっていますので、気兼ねなく依頼ができます。

今、15歳の3人に1人が「孤独だと思う」と感じている。
親世代が他人に頼れない、希薄な人間関係が原因にあるのではないか。

―頼り合うという良い部分は利用でき、煩わしさは無くしてくれているのですね。

甲田さん 今、15歳以下の子どもの3人に1人が「孤独だと思う」と感じている、というデータがあります。

この孤独だと思う背景には、親が何か困ったときに周りを頼らずに、自分の力だけで何とかしようという様子を子どもが見て育ち、何かあっても周りを頼ってはいけない、とにかく我慢する、自分で何とかするしかないと思ってしまっているのではないかと思います。

共働きの場合もそうですが、シングル世帯の子どもは特にそうだと思います。「シングルだから」と後ろ指差されないように、人に迷惑かけちゃいけないよ、いい子にしているんだよと言われているので、特に進学や恋愛で悩み始める年齢になると、誰にも相談できずに一人で抱え込むようになってしまいます。それから更に、何て自分は孤独なんだろうという連鎖になってしまうのです。

日本の子どもは、世界と比較しても自尊心が低く、「きみはきみのままでいいんだよ」「きみの家はきみの家でいいんだよ」「全部の家庭が違っていいんだよ」という観念を教科書で学べず、教えてもらう機会もないと思うのです。

―今の学校では子どもも忙しくなり、友達と遊ぶことも少なくなってきていますし、いろんな家族を見るということは難しいですね。

甲田さん はい、しかし、「子育てシェア」でいろんな家に預かってもらう経験をすると、うちはシングルファミリーだけど、あそこの家にはおじいちゃん、おばあちゃんがいる、ということや、うちは夕飯の後にお風呂の順番だけど、他ではお風呂の後ご飯の順番なのねとか、ご飯をよそうときは必ずおじいちゃんからとか、うちは子どもからなのに…。というように、色々な家庭環境に触れることで、「それでいいんだ」「そういう家族もあるんだ」という多様性を子ども自身が学ぶ事はとても大事だと思います。

―特にシングルだと、子どもだけでご飯ということも多く、隠してしまったり、友人宅にお願いしても、うちには呼べないという気持ちもあり、機会も少ないですね。

甲田さん どうしてもシングルの方は、迷惑かけて申し訳ないと思いがちなのですが、子どもを預かっている方々の声を聞くと、子ども3人のところに1人増えて子どもコミュニティーができるだけ。だから、子育てがすごく楽だとか、逆に子どもさんが来てくれることによって、自分の子どもの成長を見ることができるというのもよく聞きます。兄弟体験、姉妹体験もできるというのもよく聞きますね。

―子供の中にいることで、普段見られない一面がみられるということですね。

甲田さん 上のお兄ちゃんやお姉ちゃんが、兄弟にだったら「うるせー」しか言わないのに、人の子どもが来ると勉強を見てあげる優しいところに気づいたりと、預かっている側の人たちからの感謝の声も多く聞くので、預ける側は過剰に申し訳ないなんて思わず、預かる側にもメリットがあるから預かってくださっているという気持ちで、遠慮せずお願いしてほしいと思います。

―500円払うことで、次も頼みやすいというところもありますね。

甲田さん 普通は預けたら預かってあげなきゃいけないというプレッシャーを感じると思うのですが、「預かってもらってありがとう」「預けてもらってお礼までもらってありがとう」という「ありがとうの等価交換」が、シェアリングのサービスのいいところです。

―働いているから送迎が無理という理由で習い事を諦めさせたり、親子ともに我慢したりすることも多いけれど、このようなサービスがあるだけで全然違いますね。

甲田さん 全然違うと思います。経済的なメリットと精神的なメリットの両方があると思っています。

進学塾となると隣近所で教えてもらうのは難しいかもしれないですが、4~5歳ぐらいのピアノ教室は、ピアニストを目指しているわけでなれば、20年ピアノ習っていたというおうちでピアノを教えてもらうのでもいいですよね。少し年上のお姉ちゃんのピアノが上手で憧れて、うちの子どももやる気になったとか、宿題を教えてもらったという話も聞きます。

―シングルマザーで実家に頼っているという方は結構少数ですし、色々な家庭を体験できて、本当にありがたいサービスですね。

甲田さん 実家も経済的に頼れないという方、精神的に帰れない、帰る場所がないという方たちもとても多いですね。それならなおさら、必然的に周りを頼るしかないということを自覚して、腹に決める必要があると思います。

人を頼るというのは良い悪いでもなく、決して簡単なことではないんですよね。自分の中で気兼ねするという思いがある以上、その気持ちを乗り越えなければ頼れないので、そこは子どものために、自分の家庭の世界観しか分からない子に育てるのではなく、きちんと生きる力を育くむために、地域や多くの人にふれさせてあげるんだという覚悟を持つ事で、人に頼れるようになります。子どものために、そういう思いを持ってほしいと思います。

シングルマザーの方にはママサポになることもお勧めです。

 

―近所に知り合いがいない、頼るのが下手だという人はどうしたら良いでしょうか。

甲田さん まずはママサポになってもらうのが一番良いと思います。ママサポには、周りの人たちと交流会を開催したり、友達を作ったりというノウハウを提供していますので、友達が増えて頼り合えるネットワークがすぐできると思います。シングルの方というのは、地域でのネットワークが希薄になりがちなので、子どものために友達10人つくってあげる!という目標を作ることも良いかもしれません。

―ママサポになるノウハウは無償で教えてくださるということですよね。

甲田さん 無償です。自分が昼夜働いていて、どこか1日で子どもと一緒に遊ぶ時間を作ってあげたい、子どものための日を作ってあげたいというのであれば、1週間2時間からでもママサポ活動を行ってみてもいいと思います。そうすることで、地域の人たちと一緒にお昼ごはん食べる会や、ご近所同士で子育ての悩み相談会など、難しくないことからスタートしていけるのではないでしょうか。そのときに、子どもは子ども同士で遊ばせておくことで、親同士も仲良くなりやすいと思います。自分がママサポになることによって、自分の預け先をたくさん見つけることができますし、子どもも友達をどんどん増やすことが出来ますよ。

―とても良い活動ですね!

甲田さん 子どもにとっても、「なるべく早く帰ってくるからね」と言われて、帰ってきた後に知らないところに預けられるより、近くの○○ちゃんのおばちゃんのおうち、○○ちゃんのおじちゃんのおうちで遊んで待っていてね、というような環境であれば、多様性や協調性を学びながら育つことができて、もう少し大きくなってからも、周り近所に知り合いの目があることによって、安心して暮らせるような地域環境になります。

―シングルの方には特に必要な仕組みに思います。今後はどのようにされていく予定ですか。

甲田さん 今は、子育てを頼るというところで、送迎・託児だけに限っているのですが、本年度中に、子どものお下がりとか、おすそわけも近所でできるようなコミュニケーションの深掘りをするような機能追加を予定しています。将来的には、海外にもサービスを広めて行きたいと思っています。

 Profile

甲田 恵子さん
株式会社AsMama 代表取締役CEO  

1975年大阪府生まれ。関西外国語大学卒業。2009年11月に株式会社AsMamaを創設。著書に『子育ては頼っていいんです~共育て共育ち白書』(神奈川新聞社)、『ワンコインの子育てシェアが社会を変える』(合同出版)
お問い合わせ先 AsMama

AsMamaのキャラクターは ライオンの革を被ったウサギのママ。世の中で闘うママたちを表している。