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シングルマザー採用で組織を活性化させる 2代目社長の取り組み

子供のことで何か申請するときに、親の職業欄に「フリーター・アルバイト」と書く恐怖。シングルマザーなら痛いほどよくわかるのではないか。自らの雇用形態が我が子にハンデになるのかもしれない。保育園、幼稚園にフリーターでは受からないのではないか、陰口を叩かれるのではないか、社会的に信用されないのではないか…。
そんなシングルマザーの不安を取り除いたのが東京都練馬区にある牧野電設株式会社の「シングルマザー採用」。
社長である牧野氏と、牧野電設で実際に働くシングルマザーにお話をうかがった。

世の中の問題点が二つ同時に解消できる「シングルマザー採用」
雇用を通して世の中を変える

 

牧野電設株式会社は建物の基礎の段階から、コンセント・スイッチ・照明などの配線、電話・テレビ・インターネットといった通信工事に至るまで、建物に関する電気工事を総合的に手掛けている。
実績の多さ・業歴の長さから、国土交通省からはAランクという高い評価を受けているが、「シングルマザー採用」をいち早く取り入れた会社としても名が高い。

──なぜシングルマザーの採用を始められたのでしょうか。

牧野社長 もともと2011年から新卒採用を始めて、5人が当社に来てくれました。その中に文系の学生さんや女性が多くいました。建設業界で文系の基礎知識を持たない子が技術者になるのは難しい、あるいは女性が建設業界で働くのは難しい、そういうことが「当たり前」の中でのスタートでした。

ところがふたを開けてみれば、紆余曲折はあったものの、無事にその5名は技術者として育ちました。このことが私にとっても、会社にとっても大変自信につながりました。
基礎知識を持たない人にも仕事を教えることができる、女性でも働きやすい環境を整えることができるという仕組みができた。ではもう少し他のところに転用できないかな、と考えるようになったのです。

建設業界というのは、今人手不足でとても悩んでいます。一方、世の中に目を向けてみれば、働きたくても働けないという人が多数いる。そこにうまく橋渡しができれば世の中の問題点が一度に2つ解消し、より良いものを社会に提供できるのではないかと。そんなシンプルな考えがきっかけでした。

──すばらしいですね。シングルマザー採用ということですが、他の社員の方と待遇面などで違いはあるのですか。

牧野社長 基本的には変わりません。

──他の女性社員と一緒ということですね。

牧野社長 はい。ただ、急な休みやフレキシブルな働き方を望む方が多いので、グループで分担しながら時間的には融通が利くようにしています。仕事も給料形態も何か特別な差があるわけではありません。

──シングルマザーの方を初採用されたのはいつからですか。

牧野社長 一人目が2017年の5月です。

──現在、シングルマザーの方は何名勤務されていますか。

牧野社長 女性20名のうち、9名がシングルマザーです。

シングルマザーの働き方は、若者世代に訴えかけるものがある

 

──約半数はシングルマザーの方なのですね。シングルマザーの方が増えて、何か変わったということはありますか。

牧野社長 変わったこと、これから変えたいこともありますが、働きたくても働けない方が他にも沢山いる中でシングルマザーに着目した点の一つとして、当社が新卒採用を始めて日が浅いということがあります。

初の新卒入社が2012年の4月ですから、彼らは今年30歳になります。まだ家庭を持っていなかったり、人間としても経験の浅い子が多かったりする現状があります。2012年から今年2018年の4月に入ってきた子がほとんどなので、社内の7~8割は20代となります。一般的に、そういう若い子たちは、「働きたくて世の中に出る」というよりは「何となく社会に出る」という感覚の子もいるように感じます。このように若くて人生経験の浅い社員に対して、お子さんを育てながら働かなければいけない責任があり、真剣に働くという全く異なったマインドを持っているシングルマザーの背中を見せることによって、良い刺激を与えることが出来るのではないかと期待しているところがあります。
他にも、建設業界は非常に残業の多い業界です。私自身入社から9年間工事現場で監督をしましたが、毎日22時~23時までの残業は当たり前でした。しかし、17時を過ぎてから22時、23時までの6時間というのは、本当に詰め込むだけの仕事があるのかというとそうではなく、遅くまで残っていることが美徳とされていたり、早く帰って何か失敗があると、原因に関係なくても「早く帰っているから駄目なんだ」と先輩に言われたりして、何だか帰りにくい雰囲気がありました。

年齢層が高く、体育会系の業界ですから、二言目には上司から「俺が若いときは……」と言われ、先輩、上司が残っていると帰れない。そのような旧態依然と環境で、遅くまで残ることが美徳とされ、早く帰ることは悪というような感覚がある。一方で、シングルマザーのように定時には仕事を終わらせて帰らなければいけない人がいる。彼女たちにとっては、仕事を効率よく、早く終わらせることが責任で、そこに自分の能力を詰め込むわけです。そのような真逆の人材が入ることで、会社そのものの時間に対するマインドが変わればいいなと期待しているのです。

このような思いがあり、あえてシングルマザーを採用したいという考えがありました。今それがどこまで具体的に変わってきたのかというのは、まだ数字として表れてはいませんが、少しずつみんなが「早く帰らなきゃ」とか、あるいは自分がそうでなくても、「周りの人間は早く帰りたいのだ」ということが理解できる風土が生まれてきたように感じます。

──採用にあたり、社内で反対はありませんでしたか。

牧野社長 社内での反対はありませんでしたが、社外からは猛反対されましたね。

──それは何故でしょうか。

牧野社長 急な欠勤が多く仕事に影響が出るとそれをフォローする人間が必要になり周りの人に負担がかかってしまうといった観点からの指摘でした。仕事に貸し借りができるので人間関係がギスギスしてしまい他の従業員からクレームが出ると心配されましたね。

──実際にはどうですか。

牧野社長 問題ないようです。誰かが休んだことでそのしわ寄せがみんなにいくというのは、組織の仕組み自体が上手く機能していないということです。誰かが休んでも問題なく回るような人員編成や業務の割り当てを目指さないといけません。それがシングルマザーであろうが、女性でなかろうが一人の欠勤でガタガタになるようでは、それは働きにくい組織・環境だと思っています。

女性はカナリアのような存在。
シングルマザーや女性が働きにくい環境は、誰にとっても働きにくい環境である

 

──もともと女性従業員が多いのですか。

牧野社長 はい。もともと女性が多く、4割ほどが女性でした。女性の多い職場なので、周りからは華やかで羨ましいと言われます。しかしながら、単純に女性を雇用することがすぐに何かの問題を解決したりするわけではありません。僕はいつもそこで「カナリアのような存在だ」というような言葉を使って表現しています。

建設業界において女性や文系出身といった専門知識を持たない方は、どうしても弱い立場になってしまいます。そのような立場の方が働きにくい環境であるということは、体力のある理系で知識のある男性であっても、どこかで行き詰まる結果になると思うのです。弱い立場の人間でも能力を発揮できる環境を整えることが誰にとっても働きやすい職場になると思っています。なので、今の大変さは将来に向けた先行投資だと考えています。

──すばらしいお考えですね。そのお考えはどこから湧き出たものなのでしょうか。

牧野社長 私自身がこの会社の二代目社長になりますが、22歳で入社し30歳まで不満の塊でした。なぜこんなに友達に自慢できないような会社にいるのだろう、なぜ自分が勤めている会社は劣悪な環境なのだろうという想いがすごくありました。その時の不満を一つ一つクリアしていっているだけなのです。

子供に、自分の雇用形態でハンデを作りたくない。

 

──では、実際に牧野電設に勤務されているシングルマザーの方にもお話を伺います。
まず、シングルマザー採用を知ったきっかけというのは。

Aさん 私自身がこの会社の二代目社長になりますが、22歳で入社し30歳まで不満の塊でした。なぜこんなに友達に自慢できないような会社にいるのだろう、なぜ自分が勤めている会社は劣悪な環境なのだろうという想いがすごくありました。その時の不満を一つ一つクリアしていっているだけなのです。

──では、実際に牧野電設に勤務されているシングルマザーの方にもお話を伺います。
まず、シングルマザー採用を知ったきっかけというのは。

Aさん 私は離婚後、実家暮らしをしながら医療事務で働いていました。実家にずっといるより子供たちと3人で暮らしたいなという思いが強くありました。ですが家賃のことを考えると一人ではやっていけず、どうしたらいいのか悩んでいました。そんな中、「シングルマザー枠というのがあるよ」と紹介され、お話を聞きに来たのがきっかけです。

──社内で何か、シングルマザーだから特別というのはまったくない感じですね。働きやすさはどういう点で感じますか。

Bさん 急なお休みでも書面で申請して…というのではなく、全社でつながっているグループウェアに連絡を入れるだけでお休みの許可が下ります。そのため急な子供のトラブルにも対応しやすくて助かっています。

Aさん 特にシングルマザーだけというわけではありませんが、子供の予定などで平日休んでしまったときは、土曜日に代わりに出勤でき就業時間も決められた時間内で融通が利くので働きやすいです。

──オフィスもきれいで、音楽も流れる明るい雰囲気で、女性も多く「建設業界」という雰囲気ではありませんね。

──シングルマザーだから何か引け目を感じてしまうという方も多くいます。就職するにあたり、違う目で見られるのでないか、下に見られるのではないか、陰口をたたかれるのではないかなど、心配にならなかったですか。

Bさん 会社に対しては、そういう心配はなかったのですが世間からそのように思われるのが嫌で正社員として働きたいと希望して入りました。究極な話、社員からどう思われようとどうでもよかった。世間で、我が子の周りの親や関係者から言われるのが嫌でした。そういう気持ちで正社員での雇用にこだわりを持っていたのですが勤務するには残業があったり、休みづらかったりで育児をしながら働くことは叶いませんでした。しかし、牧野電設では社員として雇用され融通も利かせてもらえるので自分が思い描いている希望が叶う会社であるなと感じています。

Aさん シングルマザーになってから正社員で働こうと思い職を探しました。想像以上に子供の休みは多く、休んだときの預け先もないため不採用になることも多かったです。やっと見つけた会社でも急な休みになるとやはり嫌な顔をされ周りの冷ややかな目線に嫌な思いをするばかりでした。最初はシングルマザーだから恥ずかしいという気持ちもありました。ですが今は自分が父親と母親の役目を果たし頑張ることで子供たちを幸せにすることができるという自信へとつなげることができました。現在は明るく楽しく仕事に取り組んでいます。牧野電設は、「シングルマザーだから」というのはなく、ただ一人の社員として人として認めてくれるので負い目を感じたりせず、自分らしさを出せていると思います。

──そこがまた自分の自信にもつながって良い循環になるということですね。お子さんは喜んでいらっしゃいますか?

Aさん 「将来の夢は、ママみたいな仕事がしたい」と子供が言ってくれたことが嬉しかったです。前職は土曜日が仕事でしたが、今は土日が基本的にお休みなので、子供と過ごす時間が増え子育てのしやすい環境になりました。

自分の扶養として子供を育てる覚悟
「正社員」という肩書きを妥協できない

 

──離婚前に正社員ではなかったシングルマザーにとって、社会の受け皿はまだまだありません。小さな子供を育てながら正社員として働くことは大変です。パートやアルバイトからスタートしなかった理由はなんですか。

Bさん 私は子供の幼稚園を申し込む際に、職業欄にフリーター・アルバイトと書くことで不利になり我が子が入園できなくなってしまうのではないかという恐怖や不安がとてもありました。

─―職業欄に「会社員」と書ける安心感ですね。

Bさん そこに自分が固執してしまっている部分もあるのかもしれません。でも世間は働き方ではなく、やはり正社員かどうかという肩書きがないと入れない環境があるのが現実です。
正社員にこだわることは私にとってとても大切なことです。子供が立派になるまでは自分の責任。自分の扶養として子供を育てるうえで、妥協はしたくないという気持ちが強いです。

─―なかなかまだ受け皿がなく、正社員になるなら育児を諦めて仕事に生きる、無理なら正社員は諦めるという難しい現状で、このような理解のある会社が増え、社会的常識が変わっていって欲しいと思います。最後に牧野社長に今後の展望をお伺いします。

牧野社長 たまたま当社がシングルマザーを採用して知識のない方に技術を教えるという取り組みをしていますが、これをきちんと整備することでなぜ教えられ定着させることができるのかを体系化できると思います。そうして、自分自身この建設業界の中で育ててもらったので還元し、恩返しをしていきたい。

もう1つは、新卒採用を通じて文系が技術者になれるなんて考えもせず就活の選択肢から完全に除外していた子がたくさんいるということを感じました。その傾向というのは、どちらかというと男性より女性に多く、「そんな可能性があったなんて」と目を輝かせてくれます。建設業界だけではなく、例えば伝統工芸の世界など女性が一般的に働くものと認識されていないような職業、そもそもそういう選択肢があることを知られていない職業がまだまだ世の中にはあるように思います。
最終的にはそういったところに建設業界を中心に女性が活躍しているということにスポットを当て情報として発信していくことで業界だけでなく社会全体の活性化につなげて行きたいと思っています。

 

取材協力/牧野電設株式会社
http://www.makino-d.co.jp/

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