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”かわいそうな人たち”から“活躍する人たち”へ 世の中の目が変わってきた

一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事:江成 道子

 

──一般社団法人 日本シングルマザー支援協会の活動内容を教えてください。

江成さん 活動の中心は、就職支援、その就職支援に伴うシングルマザーの支援ですね。そのシングルマザーの支援を「ひとり親コンシェルジュ」という名称で行っております。

通常の職業紹介だと、「こういう人いない?こういう仕事ないですか?」で終わりですが、私たちは支援の観点から始まっているので、シングルマザーの人たちが自立できるようなマインドづくりであるとか、例えば「お子さんのために自立しましょう」というようなセミナーを行うなど環境づくりから取り組んでいます。

また共感、勇気が出るような精神的なサポートを行います。そのような環境があってこそ就職ができ、自立できると考えています。

──利用するには?

江成さん 会員登録は無料で登録をしていただくとメルマガが届きます。

メルマガでは会員さん同士の交流、企業さんから色々な情報、イベント情報などをお届けしているので、読んでいただき、関心のあるイベントに参加したり、情報収集したりすることができます。

──江成さんがこの仕事を始められたきっかけは?

江成さん 支援協会を作ったのは2013年になります。自分の経験を活かしての起業を考えていました。

私の経験といえば2度離婚をし、一人で子育てをして一生懸命働いてきたことでした。シングルマザーの当事者で、その苦しさも理解したうえで、シングルマザーの方々に自分がしてきたような思いをさせたくない、もっといい環境にしていきたいとの思いでこの支援協会を立ち上げることにしました。ビジネスモデルも何もなく、一人で団体を作っただけの状態でした。

──たった一人で?

江成さんはい。協会を作って、ホームページを立ち上げたその瞬間から今日まで問い合わせが絶えず、対応を続けてきたら、5年経っていました。

5年間で600社からの問い合わせ

 

──シングルマザーの方から問い合わせが多い?

江成さん いえ、企業からの問い合わせが途絶えないのです。最初の問い合わせはフジテレビでした。20人のシングルマザーを生徒にした番組へ出演したところ、それを見ていたシングルマザー向けの新しい部署を作った人材紹介会社の人からの問い合わせがあり、その方たちとの最初の取り組みとして横浜市と就職イベントを開催しました。

──問い合わせに対応していきながら協会の方向性が決まっていったという感じですね。

江成さん 5年で約600社から連絡をいただきました。人材の問い合わせが多いですが、最初は地場の小さな会社が支援を申し出てくれたり…。現在では5年経ち、誰もが知っているような東証一部上場大企業などからも日々連絡があります。

──人材派遣の会社から問い合わせが多いということは、シングルマザーの方を受け入れる企業がたくさんあるということですか?

江成さん 基本的にはたくさんあります。多くの人材紹介の会社もシングルマザー向けに間口を広げています。

──必要とされているっていうことですよね。

江成さん 企業側のニーズは少しずつ変わりつつあリます。多様化がささやかれる中、国も方針を打ち出し、大企業も障害者・シングルマザー・外国人の採用、雇用を進めています。

企業が労働者の不安を取り除く働きかけをし、既存の社員の意識を変えて、新しい労働力もうまく融合させながら進めて行く。そうすることによって、人材不足、人手不足といったところを解消していこうという企業も多くなってきたと感じます。
受け入れ先も増え、私たちの協会の会員も増えました。こちらのニーズは「仕事がない、収入が低い、を解消する」ことだったので、「これは企業とマッチングする!」と思って進めていくと、意外にもシングルマザーの就職に対するマインドに難しい部分があるということがわかりました。

現在は、シングルマザーのマインドやモチベーションを上げていくということ、仕事の就職支援、一人ひとりに寄り添ったコンシェルジュサービスという3つを柱にして活動しています。

「女性躍進」だけではボロボロに

 

江成さん 経験上、シングルマザーが子育てをしながら働くことの大変さとか、社会で生きづらいということはわかっていましたが、私は専業主婦になったことがなかったので、一度家庭に入った人が社会復帰することがどんなに怖いかということがわかりませんでした。

協会で色々な方に接すると、ほとんどの方が「子供が小さいから」とか、「私には無理」と言って、なかなか新しい一歩が踏み出せない。その言葉は恐怖心から来るものであって、その恐怖心を取り除いてあげないと新しいことに向かえない。就職や変化に対して恐怖心で動けない人が多いのに、そもそも必要なケアができていないと気付きました。

「女性活躍」と取り上げられていますが、日本にはメンタルをケアする仕組みがないので、みんなボロボロになっていくわけです。

──入社できてからはどうですか?

江成さん 環境の変化が不安を生んでしまう傾向があります。ひとりで子供を育てるうえで、どうしても不安が先立ってしまいます。例えば子供がちょっとわがままになった気がする…それは私が勤め始めたからじゃないかと。

──わかります。

江成さん そうするとこの仕事じゃダメなんじゃないかと、そのような悩みに一度落ちてしまいます。

だからこそ私たちは、環境が変わり繊細になるこの時期に、互いに支え合える仕組みを作っています。例えば仕事の悩みなら企業に相談できますが、悩みがプライベート絡みになると誰に相談していいのかわからない。本人が乗り越えなければいけないことであれば、私たちが寄り添って解決しますし、悩みが仕事から派生している場合で、企業にも考えてもらわないと困ることであれば、私たちの方から企業の方に話します。「一緒に考えましょうか?」と寄り添う形で、勤務が難しい場合も退職まで私たちが見守ります。

単純に雇用するだけでは本人たちが悩み、結果、辞めてしまう。企業が即戦力を求めてしまう中、シングルマザーは時間帯が限られている。能力の高い低いではなく、一般のフルタイムで働いている社員の方とはそこが全く違うわけです。

すると、あまりある能力を発揮することができないという不満感につながってしまいます。そこは企業と協力して解決していきます。

横浜市と「ひとり親コンシェルジュ」サービスで協定を結ぶ

 

──まさに「ひとり親コンシェルジュ」サービスをしてきたということですね。

江成さん そうなんです。今回(平成 30 年 2 月 28 日)、横浜市と協定を結ばせていただきましたが、サービス自体は今まで取り組んできた活動全体を「ひとり親コンシェルジュ」と呼んでいるので、横浜市と新たに何かを始めたのではありません。

今回の協定は「民と官のできることを広げよう」がテーマです。

私たちのところに「お金も資産もなく、働けない状況です」という相談が来たとしても生活保護費をあげることはできません。「市に一緒に相談に行こう」となります。

ただ、市役所に「年収を500万円にしたいです」って言っても「頑張ってください」と言われるだけです。そもそも頑張る方法がわからない状態なのですよね。そういう人たちが市に相談に来た場合、協会を紹介していただけると、私たちで適切な支援ができます。
個々にあった支援の幅を広げたという風に理解していただけると1番わかりやすいですね。

世帯主の意識をもつ

 

──シングルマザーの貧困についてはどうお考えですか

江成さん 収入が低い事務の仕事を選ぶ方があまりにも多いと思います。

──それは子育て、時間の兼ね合いで?

江成さん 簡単に言うと、意識が「お母さん」なのではないでしょうか。だから主婦がパートを選ぶように仕事を選ぶ。しかし、シングルマザーは世帯主です。ですから収入の面では男性と同じ仕事を選ばなければ生活できないですよね。

でも世帯主だという意識にはなかなかなれないので、「世の中には仕事が無い」と思ってしまう。例えばシングルマザーがハローワークに「仕事を探しています」と行くと、「どんな仕事を探していますか?」と聞かれ、「事務員でお願いします」と言うと、「はい、事務員ですね」と紹介されます。

事務の仕事は倍率も高く、条件の悪いシングルマザーだと受からないわけです。やっと採用されたとしても手取り15万円。これでは生活できません。最初の選択が違うということを誰も教えてくれないんですね。

“かわいそうな人たち”から“活躍する人たち”へ
世の中の目が変わっってきている

 

──国が悪い、会社が悪いと思ってしまう。

江成さん まそのことに気付けるきっかけが必要だと思います。

まず、職業の選択を変えましょうと。事実、シングルマザーは今、必要とされています。“かわいそうな人たち”から“活躍する人たち”へ世の中の目が変わってきたなと感じています。私たちの協会に企業・自治体からの問い合わせが多いのも、シングルマザーに直接アクセスできる方法が他にないからです。協会に問い合わせがあるということは「求められている」ということですので、自信につなげてもらいたいと思います。

シングルマザーは恐怖心がたくさんあります。でもその一歩を私たちは応援します。私たちにはできるんです。それを一緒に感じてもらいたいですね。

【問い合わせ先】
協会のホームページ
http://シングルマザー協会.com

 Profile
江成道子さん
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事
一般社団法人ウーマンズエンパワメント協会 代表理事 
シングルマザーサポート株式会社 代表取締役 
夫の借金を背負って離婚し、貧困を肌で感じながらの子育てを経験。その後、仕事を変えながら収入を上げていき生活の基盤を作り上げる。2012年4月よりシングルマザー専門コーチとして活動を始め、多くのシングルマザー、シングルマザー予備軍の方の心に寄り添ってきた。2013年7月 日本シングルマザー支援協会設立。2度の離婚で5人の娘と孫が4人いる。