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当事者ではない男性が「孤立を防ぐ」ために切り拓く、ひとり親3500名のつながり

一般社団法人 ひとり親支援協会「エスクル」の名前を始めて目にしたのは、コロナ禍によるひとり親への支援策を調べていたときでした。「あれ? 似た名称の団体名はよくあるけれど、知らないなぁ…」と興味を惹かれ、調べてみるとそこには若い独身男性の紹介文が。

当事者ではない男性が、ひとり親やシングルマザーのための支援を行い大きな成果をあげているケースも少なくありません。しかし、なんだか少し今までと違う印象を受けました。

力あるリーダーが元気よく大勢をまとめて引っ張っている感じではなく、一緒に横に並んでいるような。「支援を与える/受ける」という構えた感じではなく、SNSでのつながりのような、気軽で自由な感じ。それであって活動内容は驚くほどに細やかで、スピーディー。

そこで代表の今井智洋さんに取材を申し込みました。(取材・文/浦邊真理子)

孤立を経験したからこそ、「孤立を防ぐ」活動をスタート

――自己紹介をお願いします。

今井さん:サラリーマンをしながら、一般社団法人 ひとり親支援協会の代表と同時に、ひとり親交流サークル「エスクル」を運営しています。

――一般社団法人ひとり親支援協会ではどのような活動をされているのでしょうか。

今井さん:大きく以下の2つの活動に分けられます。①ひとり親家庭の生活向上のための活動と、②ひとり親家庭を“孤立”から守るための活動です。

ひとり親家庭の生活向上のための活動は、お役立ち情報の発信、行政連携、アンケート調査、国・自治体への政策要望、子供服や物品の譲り合いなどです。HPやSNSを通じてさまざまな情報発信をしており、HPは月間3万人以上が訪れ、仕事・家事・育児と毎日忙しいひとり親の方々から「これだけの情報がまとまっている場所はなかなかない」、「要点がまとまっていて助かる」とのお声をいただいています。

ひとり親家庭を“孤立”から守るための活動は、ひとり親交流サークル「エスクル」をはじめ、死別ひとり親のグリーフケアの場でもある「エミナル」、未婚の母のための「ミコママ」、ステップファミリー(婚活・恋愛中の方も含む)の相談ができる「ステファ」、DV・モラハラを受けた方や、障害児を持つ方などさまざまなコミュニティを通じ、同じ状況の方と交流できます。

画像/大阪市とのひとり親支援での協力協定締結式。左:鍵田大阪市副市長(在任時)、右:今井さん 提供/一般社団法人ひとり親支援協会

――エスクルはどのようなコミュニティなのでしょうか。

今井さん:ひとり親と子どもたちのための場所です。お花見、公園・水遊び、夏祭り、ハロウィン、クリスマス、節分、ひな祭りなど大人も子どもも笑顔になれるイベントを開催しています。

画像/節分パーティ 提供/一般社団法人ひとり親支援協会
画像/チョコフォンデュ パーティー 提供/一般社団法人ひとり親支援協会
画像/節分での豆まきならぬ、ボール投げ。エスクルでは、明るく楽しい雰囲気で、ひとり親の子どもたち同士が交流できる場所として四季折々の交流会を開催している。提供/一般社団法人ひとり親支援協会

現在はコロナウイルスの影響のため、Zoomによるオンラインおしゃべり会やオンライン飲み会、忙しい方もいつでも気軽に参加できるLINEグループによるオンライン交流をしています。

シングルマザーはもちろんのこと、シングルファーザーも多く参加していることが特徴です。

また、ひとり親になる上で、漠然とした不安を抱えているプレシングルの方も多いため、先輩メンバーに経験談をお届けしたり、エスクルにはさまざまな職業の方がいらっしゃるため各々の技能の還元、支援情報の共有など、ひとり親予定者の支援にも力を入れています。

画像/ZOOMを用いたおしゃべり会や飲み会なども開催 提供/一般社団法人ひとり親支援協会

孤立はすぐ隣にあり、誰もが孤立する可能性がある

――なぜ、今井さんはこのような活動を始められたのでしょうか。

今井さん:ひとり親家庭を“孤立”から守るために始めました。その背景には、私の家族にひとり親がいたこと、私自身が孤立に苦しんだ経験があります。

私はメンタル不調が原因で30歳目前に会社を休職していました。誰にも相談できず、一人で問題を抱え、何をしたらよいのか分からず、周囲の人たちもどのように対応したらよいのか分からず腫物に触るように気を遣われていました。

同じような悩みを抱える方が参加するコミュニティに参加できたことで、共感し合い、はじめて「ひとりじゃない」と感じました。一年半で復職することができましたが、年代的にも離婚する友人が数名いて、ひとり親となり私が経験したように孤立している話を聞き、何かできないかと思ったことがこの場所を立ち上げるきっかけになりました。

「ひとり親」は一括りにできないほど、皆状況が違います。性格の不一致での離婚もあれば、不倫、DV、モラハラ、死別、子どもの問題、居住の問題、都心部では支援の動きが盛んであっても、地方では理解が得られないという話もあります。今、私たちはLINEやSNSで交流もできますし、そのような孤立を防ぐことができます。

シングルマザーだった祖母の存在

――しかし、男性で未婚の今井さんがプライベートで、ひとり親の問題に関わることに難しさはありませんでしたか。

今井さん:もう一つ多大な影響を受けたのは、私の祖母が死別のシングルマザーであったことです。3世帯で同居しており、長男だった私は、小さいときからおばあちゃんと一緒に寝ていました。父親が2歳、叔父が0歳のときに死別し、後妻になるか子どもを手放すかしかない時代に、働いて女手一つで二人を育てたおばあちゃんの話を、子守歌代わりに聞いて育ちました。

女性が一人で働き、子どもを育てることが今以上に大変で、強い偏見もあった時代です。父と叔父が飴玉を2つに割って食べていたという話、父は自分で奨学金を探し、自分で手続きをして高校に進学した話など印象に残る話をたくさん聞いて育ちました。

おばあちゃんは「二人の子どもを育てることが自分の運命(さだめ)と思い生きてきた」と話していました。私は現在の活動を通して、この場所を守っていくことが自分の運命であると感じています。

画像:交流会にて。親も子も“孤立”にならない社会を 提供/一般社団法人ひとり親支援協会
「価値ある人間になりなさい」、祖母からの言葉を胸に

――今までの経験が全て活かされているのですね。本職の傍らに、これほどの活動をされるというのはかなり困難なことだと思います。

今井さん:おばあちゃんから「価値ある人間になりなさい」と小さい頃から常々聞かされて育ちました。このおばあちゃんの言葉が私に深く刺さっています。

ひとり親支援協会とエスクルでは、コロナの影響でひっ迫したひとり親の生活向上を図るため、政策要望や働きかけをしてきました。時には心無い言葉、匿名の誹謗中傷や嫌がらせを受けますが、その度にこの活動は「価値あるものになっているのか?」と振り返り、おばあちゃんの言葉に助けられています。私が、困難に突き当たったときや活動を続けるために大切にしている言葉です。

画像/クリスマスパーティ交流会で今井さん扮するサンタクローズと子ども達 提供/一般社団法人ひとり親支援協会
コロナでメンバーが倍増、コミュニティの細分化が進む

――コロナ禍による変化はありますか。

今井さん:コロナの影響を受け、迅速に今必要とされていることを形にしようと試みています。

主に非正規社員が多いひとり親に向けて、生活に直結する応援特設ページ(無料の支援サービス一覧)にて、お役立ち情報のまとめなど支援情報を全国区で配信しています。日々変化する状況の中、エスクルのHPを見れば、必要な情報が手に入るように頑張っています。

他にも交流面での工夫として、LINE機能やインターネットを活用したオンラインコミュニティ、Zoomを利用したオンライン飲み会など感染の心配のない交流を進めています。

画像/コロナからのオンラインを利用した交流も定着化している 提供/一般社団法人ひとり親支援協会

臨時休校が始まった2020年3月から、メンバー数が倍以上の3500名となり、メンバーの立場も悩みもさまざまで、ニーズが多様化しました。皆さんの要望を受け、個別事情や悩みに応じた40を超えるコミュニティが立ち上がりました。

――短期間で多数増加している会員メンバーは、どのように広がっているのでしょうか。

今井さん:メンバーは全国47都道府県、最近は海外在住のひとり親のメンバーも増えています。ひとり親家庭に占める父子家庭の割合は1割程度ですが、エスクルはシングルファーザーが全体の2割強と多いのが特徴です。

テレビで見た、新聞で見た、ネットニュースで見た、SNSで見た、親から入るように言われた、ひとり親では友達から紹介をうけたなどさまざまな理由でエスクルを知っていただいています。

――男性のメンバーが多いひとり親のコミュニティは珍しいですね。やはり男性である今井さんがまとめられているからでしょうか。男性メンバーが多いことで何か特徴はありますか?

今井さん:私が男性であることも影響しているかもしれませんが、徹底して「ひとり親」に拘っていることも理由にあげられます。行政では現在も母子家庭のみを対象とし、父子家庭が使えない支援があります。シングルファーザーを含めたひとり親を対象としたいという想いを込め、協会名も一般社団法人「ひとり親」支援協会としました。

――入会しやすいシステム設計上、セキュリティ面などはどういう対処をされていますか。

今井さん:「エスクル」とは別に登録が必要な、オンラインコミュニティ「ひとり親LINEグループ」は当初無料としていましたが、本来の目的から外れ、コミュニティを荒らす方もいらっしゃいました。メンバーに相談の上、利用料を315円としたことでコミュニティの質が向上し、安心して利用できるようになっています。

なお、315円は最高(サイコー)な活動になるようにと語呂合わせであり、セキュリティ維持費・メンバーを集める経費などに充てています。

またオンラインコミュニティでは、有志で全国のひとり親を支援している団体をまとめており、ひとり親家庭と支援者をつなぐ活動をしています。なお、支援団体を実際に利用した感想やクチコミも共有しています。

自身の悩みやニーズに合わせて選べる、細分化したコミュニティ

――一括りに「シングルマザー」といっても、状況はさまざま、なかなか画一的なひとり親支援やコミュニティを維持することは難しいのが現状です。40に及ぶコミュニティとはどのような細分化がされているのでしょうか。

今井さん:例をあげると

●メイングループにあたる、ひとり親交流サークル「エスクル」

●オンラインコミュニティ「ひとり親LINEグループ」

●配偶者を亡くしたひとり親の集い「エミナル」

●ステップファミリー(目指す方も含む)コミュニティ「ステファ」

●未婚の母コミュニティ「ミコママ」

●DVをうけたひとり親コミュニティ

●障害児を持つひとり親コミュニティ

その他にもモラハラを受けた、不登校児を持つ、異性の子を持つ、思春期・反抗期、ワンオペ育児、高齢出産、バツ2・バツ3、精神疾患を持つ、職業別などさまざまなコミュニティがあります。

(サイトをご覧ください https://skuru.site/chiki/

画像/水遊び風景 提供/一般社団法人ひとり親支援協会

――シンママStyle読者の方にメッセージをお願いします。

今井さん:エスクルは気軽なコミュニティです。さまざまなお役立ち情報などをまとめてお伝えしています。もともと交流イベントをメインに立ち上げましたが、ひとり親家庭の方々に広く支援情報の入手、リサイクル品の利用、オンラインコミュニティ(別途登録が必要・有料)での交流など、ご自身のニーズに合わせて利用いただけます。

画像/子供服・物品の譲り合いの様子 提供/一般社団法人ひとり親支援協会
ステップファミリーや恋愛のコミュニティも

――シンママStyleの読者の方も多く登録されていると伺います。

今井さん:シンママStyleの読者さんには、婚活・恋愛中のシングルマザーの方も多いと思います。悩みを持っているけれど、なかなか普通に相談できない問題です。

私たちのコミュニティでは、ひとり親の婚活・恋愛の悩みを共有できるコミュニティも多岐に渡り、女性のみで打ち解けて話すことができるグループ、シンママ・シンパパの双方が参加して婚活・ステップファミリーの悩みを相談できるグループ、死別のひとり親の恋愛・パートナーづくりの相談に特化したグループなど、ご自身のニーズにあわせて選択できます。一人で思い悩まないで、共感できる相手とつながって欲しいです。

“孤立”から守る交流をメインに、今後も皆さまのお声を届けたいという思いで活動を続けたいと思います。

――ありがとうございました。

【お問い合わせ先】

一般社団法人ひとり親支援協会 https://skuru.site/assoc/

【プロフィール】

今井 智洋さん

富山県出身大阪府在住。

会社員として働きながら、一般社団法人ひとり親支援協会の代表理事を務め、日々ひとり親やその子どもの“孤立”を解消する社会の実現を目指す。

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カテゴリ:特集

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