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新しい離婚の方法 裁判外紛争解決手続き(ADR)という選択

皆さんは裁判外紛争解決手続き(ADR)という制度を知っていますか。初めて耳にした人も多いのではないでしょうか。この制度は、東京都港区が2020年度中に養育費不払いなどの離婚トラブルの解決を支援する事業を始めると決定したなか、裁判外紛争解決手続き(ADR)費用の一部助成を発表したことで関心が高まっています。

家庭裁判調査官として15年に渡り離婚問題に向き合い、「夫婦関係の紛争」を取り扱う事業者でもある【家族のためのADRセンター 離婚テラス】代表小泉道子さんにお話しを伺いました。(取材・文/浦邊真理子)

そもそも裁判外紛争解決手続きって何?

―裁判外紛争解決手続き(以下ADR)を理解している人は少ないと思います。どのような仕組みなのでしょうか。

小泉さん:ADRというのは、紛争解決手段であり、専門家の仲裁のもと話し合いで解決する制度です。問題解決の種類には、以下の3つがあります。

1、当事者による話し合い

2、専門家である第三者を間に入れての話し合い

3、裁判

この3つのなかでは2の手段をまとめてADRといいます。家庭裁判所の離婚調停も、裁判外であるという意味においては、大枠で2のADRに入ります。

加えて、ADRのなかでも、民間のADR業者に法務大臣の認証を与える制度が04年の「裁判外紛争解決手続き利用の促進に関する法律」によって定められました。この法律により、民間型ADRがより一層使いやすくなりました。ADRには離婚問題だけでなく「取り扱う紛争の範囲」が各事業者に定められていて、例えば不動産、金融商品、消費者トラブルなど多岐に渡ります。


家族のためのADRセンター 離婚テラス代表 小泉道子さん

―夫婦間トラブルでは、どのようなことが話し合えるのですか?

小泉さん:離婚や相続といった親族問題を話し合うことができます。別居条件や離婚条件などの夫婦問題、養育費や面会交流などの取り決め、遺産相続、財産分与など相続問題は、ケースバイケースで必要とされることが異なります。

例えば、一方が浮気をした場合があります。夫婦関係を修復するのか、もし修復するとして、どんなことを約束するのか、約束を破った場合はどんなペナルティを課すのか、といったようなことを話し合い、最終的に公正証書を作成することもできます。

あまり堅苦しく考えず、夫婦の話し合いを専門的な知識を持って公正・中立に仲介してくれる機関という程度の気軽さで利用されるのがいいと思います。

―家庭裁判所の離婚調停との違いはなんでしょうか。

小泉さん:家裁の離婚調停との大きな違いは利便性です。ADRは、平日の夜間や土日に利用することも可能です。また、期日の間隔も利用者の希望で決めることができます(家裁の調停は少なくとも次回期日は1カ月先)。加えて、遠方の方は、Skypeやzoomを使えますし、もちろんメールでの連絡調整も可能です。このような利便性や柔軟性が早期解決に結びついています。

他にも、調停委員の違いもあります。最近は、調停委員に対する研修制度を充実させている家裁も多く、以前のように年配の調停委員から男尊女卑的な意見や「浮気は男の甲斐性」などと言われる悲劇は少なくなりました。しかしやはり個人差が多く調停委員に不満を抱く人も少なくないのが現状です。この点ADRは、専門性の高い調停委員が担当しますし、場合によっては変更を希望することも可能です。

―裁判離婚との違いはなんですか。

小泉さん:上記の解決までのスピードに加えて、もっとも大きな違いは費用です。裁判になると、本人訴訟をする人は少なく、ほとんどの人が弁護士に依頼します。そして、その弁護士費用が100万円ほどになることも珍しくありません。

一方、ADRでは、機関によって費用設定は異なりますが、概ね低料金に抑えられています。当センターですと、申込時に双方1万円、1期日につき双方1万円です。3~5回の期日を設け公正証書まで作成したとしても、一人10万円程度の負担です。既に離婚したけれど、養育費をきちんと決め直したいといったような場合は、さらに少ない回数で合意することも可能です。

また、費用のほかにも裁判で徹底的に争うというより、協議の場で穏やかに話し合って解決するという話し合いの構造に関する違いも大きいと思います。

―では、デメリットはどのような点でしょうか。

小泉さん:先ほど弁護士に依頼して裁判をした場合より安価と申し上げましたが、家裁の調停を自分で行う場合は初期費用としての数千円のみですのでさらに安価です。都度利用料は要りませんので、何年話し合ってもただです。これに比べると、ADRは期日1回ごとに1~2万円の費用がかかりますので、家裁の調停に比べれば、お金がかかってしまうことになります。

しかし、離婚調停をする場合、自分は費用をかけずに一人で乗り切るつもりでも、相手に弁護士がついた場合、やむを得ず自分も弁護士を付けざるを得ないことが結構ありますので、総合的にかかる費用を比較すると「家裁の調停より高い」とは一概にも言えません。

他にも、裁判所の手続きに比べて強制力(法的・心理的)が弱いといえます。まず相手がADRに応じてくれなければ、それ以上手続きを進めることはできません。裁判でしたら訴えられれば応じなければいけませんが、相手に何も応じる理由がない場合、一方がADR調停を希望しても、相手方の欠席という結果で終わってしまったりもします。

―相手が離婚に合意をしていて裁判するほどの紛争性がない場合、権利関係を明確にさせたい場合にはADRが向いているようですね。実際には、どのような人がADRの利用が適しているのでしょうか。


画像:取材中の小泉さん 事務所には面会交流、離婚に関するこどもに向けた本などが並ぶ

小泉さん: 以下のようなケースはADRに適していると思います。

①夫婦の一方が離婚に合意していないケース 

例えば、双方ともに不貞などの有責性がなく、しかし妻がもう婚姻生活に限界を感じている場合、妻が離婚を切り出しても離婚する気がない夫は話合に応じないことが考えられます。妻が我慢できない場合、まともな話し合いもないままに突然妻が子どもを連れて家を出るケースは少なくありません。

夫は突然の別居に戸惑うでしょうし、子どもの「連れ去り」という問題にも発展しかねません。一方、別居の話し合いが進まず同居を余儀なくされているうちに、妻のメンタルに限界がきてしまい病気になってしまうことも考えられます。

ADR調停は離婚の方向で話が進むとは限りません。離婚をするための制度ではなく、「話し合う」制度です。一方が離婚に応じられない場合、当面別居というかたちで成立させることもあります。きちんと話し合い、婚姻費用や面会交流といったルールを決めたうえで別居するのは、離婚したくない夫にとってもメリットがありますので、このような場合はADR調停がお勧めです。

②夫婦での協議が困難なケース

夫婦ともに離婚に合意をしていても、離婚条件の話し合いが平行線で前に進まない場合があります。相手を目の前にすると、なかなか言いたいことが言えない、感情的になり喧嘩になってしまうというケースは多くあります。そんな場合、公平・中立な立場の専門家が仲介するADR調停が最適です。

③夫婦ともに離婚知識に乏しいケース

離婚にも合意しているし、離婚条件を公正証書に残すことも同意している。でも、決めることが多すぎて、どのような離婚条件を話し合うべきか、その項目すら分からないというケースです。

専門家の意見も聞きつつ、夫婦それぞれの希望も言い合いながら、公正証書にて定めるべき項目やその内容を話し合うことができます。

④相手には弁護士がついているが、自分は依頼したくないケース

出ていった配偶者の代理人と名乗る弁護士からある日突然連絡が来て、「今後は、全てこちらを通すようにしてください」などと言われ、いきなり青天の霹靂で対立構造に巻き込まれるケースは少なくありません。

すぐにこちらも弁護士に依頼しないと!と思ってしまいがちですが、自分には弁護士に依頼する経済的余裕がないとか、弁護士に依頼してまで紛争性を高めたくない場合、まさにADR調停がお勧めです。公正・中立かつ経験豊富な調停者が夫婦の話し合いを手伝ってくれます。必要時には相談役弁護士に意見を求めることができるので安心です。

納得して取り決めることが大切

―ADRの活動を通して、この制度のいいと思うところを教えてください。

小泉さん:ADRを利用し双方で譲り合い、話し合いによって決めるので、当事者の納得度が他の解決方法と大きな違いがあると思います。

家庭裁判所での解決の場合、調停であれ裁判であれ、運営主体が権威のある裁判所という時点で、「決められた」「従うしかない」という受け身の感覚を持つ方が多いように思います。しかし、ADRは、お互いの納得が基本ですので、自ら決めた結果として受け入れやすいようです。

当センターでは、お子さんがいるご夫婦のほとんどのケースで養育費の取決めを行いますが、支払率はとても高いと認識しています。決定事項に「納得すること」で、その後の生活もスムーズに気持ちよく進めることができるのではないでしょうか。

―ADRはどのように利用できるのでしょうか。

小泉さん:法務大臣に認証されたADR事業者はいまだ少なく、夫婦関係の問題を扱うADR事業者は全国でも10に満たないのが現状です。しかし、ADRはスカイプなどで話し合いの場を持つことができるため、国内海外、居住地に関係なく利用できます。

(一覧はこちらから)

是非、問い合わせ相談をしてみてください。

―小泉さんはなぜADRの活動を始められたのですか。

小泉さん:15年勤めた家庭裁判所調査官は、日々離婚に直面する夫婦や親子と向き合い、とてもやりがいを感じていました。しかし、裁判所で出会うみなさんは既に紛争性が高まっていることもあり、お手伝いできることに限りがありました。

日本の離婚の10分の9は、裁判所外の協議離婚です。もっと当事者に寄り添ったお手伝いがしたい、家庭裁判所調査官として培ってきた知識や経験を生かして、もっと初期の段階から、幅広くみなさんに関われる仕事がしたいと考え、17年東京家庭裁判所を最後に辞職し、家族のためのADRセンター離婚テラスを設立しました。

―最後に、離婚を考えている、現在係争中であるプレシングルマザーにアドバイスをお願いします。

小泉さん:今は情報が溢れている世の中です。離婚相談もさまざまなかたちでできるようになりました。しかし間違った情報も多いので、セカンドオピニオンとして1カ所でなく複数カ所に相談することをおすすめします。

また、相談機関は多数ありますが、解決機関が少ないのが日本の特徴です。自分たちだけでは合意できそうにない、かといって裁判所で争うことはしたくない、そんな方にとって専門家が間に入るADRの制度を覚えておいていただければと思います。

―スムーズな離婚ではない場合、裁判イコール弁護士と思ってしまいがちです。

小泉さん:係争が必要な裁判離婚の場合は弁護士に依頼する必要もありますが、まずは、自分の気持ちを相談したいという段階なら離婚カウンセラー、離婚条件は決まっているけど、公正証書を依頼したい場合は行政書士、当事者だけでは話し合えない場合はADRといった具合に、いろいろな専門家を利用できます。

【プロフィール】

家族のためのADRセンター 離婚テラス 代表 小泉 道子さん

全国の家庭裁判所にて家庭裁判所調査官として15年間勤務した後、現在は離婚や相続といった親族間紛争を扱うADRセンターを運営。また、一般社団法人家族のためのADR推進協会の代表理事として、行政職員向けADR研修を実施するなど、啓発活動にも力を入れている。

【お問い合わせ】

家族のためのADRセンター 離婚テラス

電話:03-6883-6177

mail:info@rikon-terrace.com

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カテゴリ:特集

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