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子どもは未来の主人公。「今」困っている親子に届く支援を

シンママStyle編集部

母子家庭への住宅の支援がなかなか進まないなか、この分野で先進的に活動し、さらに国際的な賞を受けているNPO法人がある。東京都杉並区を中心に全国的に母子家庭を支援するNPO法人リトルワンズ(以下リトルワンズ)だ。

代表を務める小山訓久(くにひさ)さんに、活動経緯や想い、今後のビジョンについて、リトルワンズが経営する「親子カフェほっくる」で話しを伺った。(取材・文/浦邊真理子)

NPO法人リトルワンズ 代表理事 小山訓久さん

企業や行政と連携しながら母子家庭にトータルな支援を提供し10年

―リトルワンズの活動について教えてください。

小山さん:リトルワンズは、東京都内を中心に毎月のイベントや交流会の開催のほか、空き家を活用したお部屋探しのお手伝いや、全国のシングルマザーから仕事や生活に関する相談を受け付けています。シングルマザーに寄り添い、総合的なサポートを行う団体です。

―男性が母子家庭支援のNPO法人を立ち上げるのは大変珍しいことですね。なにかきっかけがあったのでしょうか。

小山さん:私自身は母子家庭で育った経験はなく、シングルファザーでもありません。ですから、母子家庭の支援にかかわるのは日本では大変珍しがられます。

子どもの頃から読書が好きで、心理学の本を好んで読んでいました。高校卒業後、本場で心理学を学びたいと思いアメリカのオレゴン大学へ進学し、社会心理学とコミュニケーションを学びました。5年間米国で暮らしましたが、「学んだことを日本のために活かしたい」という思いがありました。

帰国後、テレビ番組制作会社に就職。そこで母子家庭をサポートする現場に飛び込む転機が訪れました。番組制作で母子家庭を取材する機会があり、日本で行われている支援が母子家庭の「今」に全くマッチしていないこと、そして社会がそのことに無関心であることに大きな衝撃を受けたのです。当時は、子どもの貧困がニュースになることもなかったころです。

住む場所や仕事がない、今日明日食べるものがないなど、命に関連し緊迫した状況で、必要なことは「待ったなし」で求められている。しかし、行政は縦割りで支援のスピードが遅く、相談に行っても部署が違うからとたらい回しにされます。支援に届くまでのスピードが遅いのです。「日本のこの現状をなんとかしなくては」と活動を始めました。

―「なんとかしなくては」と感じてどのような活動を始めたのですか。

小山さん:まず100名以上のシングルマザーの声を聴いて回り、同時に、支援団体、行政、研究機関など、母子家庭に近い方たちにお話を伺いました。

バラバラのピースを組み合わせるのがリトルワンズの役割

―アンケート調査の結果からなにが分かりましたか。

小山さん:シングルマザー、行政、支援者にギャップがあることに気付きました。協力できるところも多いのに、うまく繋がっていなかったのです。このギャップを埋め、互いを結びつける役割が必要だと感じ、22年にNPO法人を設立しました。

米国での留学時に、DV被害者支援やボランティアの経験がありました。アメリカでは支援の役割分担が明確で、「ここから先はソーシャルワーカー。ここからは警察、治療専門家」と分かれていて支援のスピードが速いのです。文化や法の違いもあると思いますが、困ったときに頼れる先がハッキリしていることと、役割が明確なことは、支援をする側も、受ける側もメリットが大きいと思います。また、悩みがあれば気軽にカウンセラーに相談できるのも素晴らしいです。自分の悩み、困ったことをだれかに相談することには、日本では「壁」があり、偏見もあります。子どもを抱えて大黒柱として働くシングルマザーには相談する機会や時間も少ないです。その結果、問題を抱え続けて深刻化したり、体調を崩してしまうこともあるのです。

シングルマザーやその子どもたちが本当に求めている支援を迅速に提供

―SNSを拝見しますと、フォロワーは1700名弱と、一支援団体としては異例の多さだと思います。どのように会員や支援者などを募っているのでしょうか。

小山さん:全て口コミや、サイトなどを見て自ら問い合わせくださる方がほとんどです。

―直接の相談件数はどのくらいありますか。

小山さん:メールやSNSを通じての相談が全国から年間300通ほどあります。迅速に対応できるように、メール、チャット、ショートメッセージ、Facebook、Twitter、LINEに対応しています。カウンセリングをさせていただいて、それぞれの悩みや問題に合わせた解決策を提案します。

統計的にいえばお金、仕事、育児についての相談が多く占めますが、それぞれの悩みは独立したものではなくて、どれも繋がっています。仕事の話になるとお金や子育ての話にもなるし、学校のことで困っているという話になると住む場所、お金の話になります。シングルマザーが抱える問題はさまざまな要素が複合的に絡み合っていることが多いので、私たちはトータルなサポートを行います。

ソフトとハードの支援。そして適材適所に繋ぐことが必要

─トータルなサポートというのは、具体的にどのようなことですか。

小山さん:お母さんとお子さんの両方に届くサポートをご提供しています。季節行事やキャンプなど交流の場を設け、ママ同士が話したり、知恵や情報を伝え合える機会を提供したり、子どもたちの成長に必要な「体験」をお手伝いする補助金や、行政の支援も伝えています。住まいやお仕事探しをお手伝いすることもあります。一方、住まいをつくったり、子育て世帯が集える居場所を運営したりするハードの支援も行っています。

私たちだけで全てを支援するのではなく、相談の内容に応じて、弁護士や医師、行政など、それぞれの分野のプロに頼っています。私たちはバラバラのピースを組み合わせる役割と考えているので、まず「総合受付」として身近にいつでも相談できるような団体を目指しています。

日本では10組に1組がひとり親家庭というデータがあります。2018年人口動態統計の年間推計(厚生労働省)によると一年間で20万7千組の離婚件数がありました。それでも、欧米のように、シングルマザーはライフスタイルの選択肢のひとつとして当たり前には受け入れられていません。徐々に変化してきているとは言え、日本で受け入れられるようになるには、まだまだ時間がかかるでしょう。

人気の親子カフェ「ほっくる」。ママ同士の交流の場でもある

―リトルワンズはスピード感に大変こだわっているようですね。

小山さん:のんびりしていると、お母さんとお子さんの命に関わることもあるからです。そして、子どもたちの成長はとても早いです。子どもは、すぐに大きくなってしまいます。時間をかけてしまうと、それだけ今、支援を必要としているのに届かない危険性があります。お母さんとお子さんの「今」のお手伝いをするため、スタッフ一同、迅速な対応を重視しています。

―昨年、脳腫瘍の治療を受けたと伺いました。そのこともスピード感に影響を及ぼしているのでしょうか。

小山さん:昨年治療を受けて、寿命は少し伸びたようですが、3年前に脳腫瘍が見つかり、余命5年と宣告されました。もし、私や団体がいなくなっても、せめて住まいの支援は母子家庭に残るようにと、かなり急いでいました。そこで、国土交通省の事業として、どこでも誰でも扱える凡庸性が高い「母子家庭を対象とした居住支援マニュアル」を整えました(2019年2月発行)。このマニュアルには母子家庭に特化した居住支援のスタンダードとマニュアルを詰め込んだので、自治体や支援団体はすぐに利用していただけます。

母子居住の実態から、事例、実際のフロー、問い合わせ先や契約書式まで一冊で全てを網羅した唯一無二の母子家庭対象居住支援マニュアル

「人生の基盤づくり」を手助けする

―リトルワンズといえば母子家庭への居住支援ですね。

小山さん:シングルマザーは、就労状態、家賃や保証人の問題、そして偏見から、部屋を借りるハードルが高い現実があります。

働きながら子育てをする必要があるので、保育園や学校、働く場所が近くにないと住まいとして成立しません。このような条件に合った部屋を探すことは容易ではありません。自ら借りようとしても断られたり、収入などの制限から希望の部屋を見つけにくくなったりして困っている方が多いのです。

家賃だけを考えると、安価な地域に部屋を借りればと言われますが、そうすると今度は仕事の機会が少なかったり、子どもたちの学校が近くになく、逆に、住む場所はあっても生活することが難しい状況になったりしかねません。家は屋根と寝床だけではなく、生活の基盤、安心の場所でもあり、子どもにとっては成長する場所でもあります。

シングルマザー、不動産会社、行政のニーズをつなげて、ひとり親家庭300世帯以上に住まいを提供

―しかし、ひとり親家庭への居住支援はなかなか進んでいません。

小山さん:住所が決まらないと行政からの支援が受けられず、子どもの保育園や学校も決められない、保育先が決まらないと仕事も決まりにくい現実問題もあります。

住まいはとても重要な問題なのに、支援は行き届いていませんでした。行政が行う支援のひとつとしては公営住宅の提供がありますが、倍率が高くすべての人が入居できるわけではありません。また、その場所も、通勤や通学に便利とは限りません。自治体のなかでも、住宅支援と福祉支援をする部署が分かれており、なかなか連携がとれていないようです。

居住支援は単なる人と家のマッチングだけではなく、お母さんとお子さんの人生の基盤づくりをお手伝いすることです。

居住支援は早急に必要であると感じ、シングルマザー(ファザー)、協力不動産会社、行政の3者がそれぞれのニーズをくみ取り、私たちがうまくピースを組み合わせることで、支援と空き家問題解決を同時に実現するモデルをつくり上げてきました。

シングルマザーへの誤解や偏見を解く作業が必要

―どのようなモデルなのでしょうか。

小山さん:空き家は増え続け社会問題となっています。空き家に困っている不動産オーナーや不動産会社、家を借りたいシングルマザー、そして行政の支援。この3つを私たちがつなぎ合わせる役目をしています。

リトルワンズ、不動産会社、そして行政がそれぞれの得意なところを活かし、不得手なところをコラボレーションすることで補い合い、みんなが助かるwin-win-winモデルです。そこには家と人をマッチングするだけでなく、「誤解」を解くことも必要とされます。

不動産会社や、不動産オーナーから、『シングルマザーはお金がないから家賃が払えない』と誤解されることも多いですが、実際にシングルマザーの8割は就労し収入があり、家賃もちゃんとお支払いしてくれます。このような誤解を解くことも私たちの大事な役割です。誤解を解いていくと、応援してくださる不動産会社やオーナーさんも多いです。

シングルマザーには、希望を聞いたうえで、単に部屋を紹介するだけでなく、仕事や生活の相談なども合わせて提供し、引っ越した後も安心して暮らすことができるようサポートしています。この住まいの支援は、国の事業として進めてきました。国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進モデル事業のほか、母子家庭に特化した唯一の居住支援法人(東京都)に指定されています。

手探りで居住支援を始めた当初に比べ、団体の認知度も高まり、協力不動産会社も増えてきました。今では、東京都、関東にお住まいであればたいていのニーズにお応えできるようになっています。最短3日でお部屋が決まった例もあります。

世界の優れた居住支援を表彰する「ワールドハビタットアワード」最優秀賞

―社会問題を解決し、ビジネス面においても誰も損をしないスキームである点が、ワールドハビタット賞などの受賞に繋がっているのですね。

小山さん:ワールドハビタット賞は、世界中の優れた住まいの支援を表彰する国際的な賞です。低収入などで住まいの確保に悩む母子家庭への支援と空き家の解消を結びつけた取り組みが、世界の共通課題を解決するとして評価されたと伺っています。世界中で使えるモデルと評価され、昨年国連ハビタット本部で授与式に参加してスピーチを行ってきました(2019年)。

授賞式は昨年5月末にナイロビで開かれた国連ハビタット総会の関連イベントで開催された。日本の団体が受賞したのは16年ぶり。 提供:リトルワンズ

行政、民間、NPOが連携して、住まいの支援を行うスキームは、LGBTs、児童養護施設出身者、外国人など母子家庭だけでなく展開できるものなので、どんどん活用していただき、社会全体が少しでもよくなればと思っています。

日本でも2019年11月「社会貢献者表彰」(社会貢献支援財団主催)、2019年12月「賀川豊彦賞」を受賞

日本にいる全てのシングルマザーとシングルファザーと子どもたちが安心して暮らせる世界をつくる

―何が小山さんをそこまで動かしているのでしょうか。

小山さん:団体を始めるもっと前のことですが、友人がシングルマザーになり、困窮していても支援を受けられずに、結果として命を絶ってしまいました。「なぜ助けられなかった」という憤りも、自らを動かしている要因の一つかもしれません。他人の人生を「豊かにできたら」と願うのはエゴだと思っています。そのエゴと、「世の中が良くなったら」というシンプルな思いが合わさっています。

そして、なによりパワーをもらっているのは子ども達やお母さん方との関わりです。すべての事業はお母さんたちと一緒に作っています。活動を始めて10年になるので、初期から関わってきた子ども達も大きくなり、大学生になった子が、ネクタイをプレゼントしてくれたこともあります。嬉しかったですね。歳月の早さに本当に驚きます。私もスタッフも、子どもたちが元気に大きくなることが、なによりの楽しみであり喜びです。

―今後の活動についてお聞かせください。

小山さん:設立当初は「自分たちだけですべての支援をする」と思っていたことも、10年目を迎え、1つの団体が全てを解決することは無理だと学びました。母子家庭の貧困問題、居住、育児、就労他さまざまな問題には特効薬がありません。母子家庭に関わるもの同士が手を組んで役割分担しながら、問題解決をしていきたいと考えています。居住支援については、ノウハウもマニュアルもできたので、日本全国どこでも当たり前のように、住まいの支援をできるように、国や自治体と一緒に広めて、家賃補助も目指したいです。

―シングルマザーの方にメッセージをお願いします。

小山さん:暗いニュース、辛いことも多いけれど、家の外にも味方がいることを覚えていてくれたら。私たちはママたちと子どもたちの協力者です。気軽に相談をして、使ってくださればうれしいです。

【プロフィール】

提供:リトルワンズ

小山 訓久さん 

NPO法人リトルワンズ代表理事

東京都渋谷区生まれ。オレゴン大学心理学部卒。アメリカ帰国後、テレビ番組制作、構成作家を経て、2008年ひとり親支援団体リトルワンズを立ち上げる。2010年NPO法人化。

「リトルワンズ」の団体名の由来は英語の「子どもたち」という意味。

小さなことを集めると大きなことになるという意味もこめられている。

NPO法人リトルワンズ:https://www.npolittleones.com/

シングルママのワンストップサイト「ココミナ」:https://sinmama.top/

Facebook: https://www.facebook.com/littleonesorg/

Twitter: https://twitter.com/npolittleones

『親子カフェのつくりかた 成功する「居場所」づくり8 つのコツ』学芸出版社

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