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自分を後回しにして頑張りすぎていませんか。 産婦人科医 杉山伸子が伝えたいこと

リプロダクティブ・ヘルス(ライツ)という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。日本語では「性と生殖に関わる健康」(と権利)と訳される。この概念のもと、活動を続ける産婦人科医がいます。女性がより健康で幸せな生活を送るためには、女性の健康リテラシーの向上が大切だと考え、リプロダクティブ・ヘルスの考えに基づき、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行うMimosa(ミモザ)の代表を務める産婦人科医 杉山伸子さんにお話しを伺いました。(取材・文 浦邊真理子)

「何故ここまで放置していたの?」医療の現場で感じてきた疑問

―自己紹介をお願いします。

杉山さん:杉山伸子です。産婦人科医として勤務する傍ら、Mimosa(ミモザ)の代表を務めています。

―何故、Mimosaを立ち上げることになったのですか。

杉山さん:10年を超える産婦人科医としての臨床経験を通じて、女性がより健康で幸せな生活を送るためには、正しい情報が圧倒的に不足していると考えるようになりました。自分の人生やこれからの働き方を考えるなかで、医療機関から地域に出て、足りない情報を伝えていきたいという思いへと発展してきました。

それは、病院の診察で、「なぜ?」と思うことがあったからです。
「なぜ、こんな大切なことも知らないんだろう?」
「どうして、そんな情報を鵜吞みにするんだろう?」
「もっと早くに病院を受診してくれたら良かったのに」

その「なぜ?」は、今から思えばとっても「上から目線」でした。「なぜ?」を繰り返すうちに、その答えが見えてきました。

今はインターネットが普及して、確かに医療情報は格段に手に入れやすくなっています。むしろ、情報が溢れかえっています。でも、医師の立場から考える当たり前のように知っておいてほしいことは、必ずしも一般の方にとって簡単に入手できる情報であるわけではありません。

そして、昼夜忙しく働く女性にとって、病院にかかること、検診をうけること、必要な情報を得て吟味することは、大変ハードルが高いことだと気づいたのです。

病院にとどまって「予防が大切」「早期発見・早期治療を」と唱えていても、必要な人にはなかなか伝わらない。それならば、地域に出て正しい情報を伝えていきたい、女性の健康にもっと身近なところで寄与したい、との思いが募りました。

今までの職場の同僚に声をかけてみると、私の考えに賛同してくれた仲間が集まりました。全員が女性医療のプロフェッショナルです。こうして、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行う団体として、2017年Mimosaが誕生しました。

(画像:取材中の杉山伸子さん)

―Mimosaはどのような活動をされているのですか。

杉山さん:メンバーは、産婦人科医、保健師、助産婦、認定遺伝カウンセラーです。それぞれが得意とする専門分野を活かした活動をしています。女性を対象とした講座やセミナーで情報提供をしたり、小中学校で性教育の話をしたり、NPO法人などの依頼を受けて講演をしたりしています。

女性の健康に関することを扱っていますが、特にリプロダクティブ・ヘルスの分野に力を入れています。

リプロダクティブ・ヘルスの概念が、現状を変えていく

―リプロダクティブ・ヘルスとはどのような事なのでしょうか。

杉山さん:リプロダクティブ・ヘルスとは、性と生殖に関する健康と訳されます。1994年、カイロ国際人口・開発会議で採択された文章に基づいて広まった考え方です。人間の妊娠・出産に関わる機能と活動過程のすべての側面において、単に疾病、障害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指します。

健康である権利が憲法で保障された基本的人権であるように、リプロダクティブ・ヘルスも誰もが保障されるべき人権です。つまり、安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持つという権利、そして、性行為をするかどうか、子どもを持つか持たないか、持つならそれはいつなのか、何人なのかなど、リプロダクティブ・ヘルスに関することは自分の意思で自由に決めるという権利を誰もが持つことを意味しています。

対象は生殖年齢にある男女に限りません。リプロダクティブ・ライツは、出生前から生涯にわたって尊重されます。結婚や子どもの有無などのライフスタイルも関係なく、すべての個人に保障されるべき健康概念です。

具体的な例を挙げると、子どもが最適な養育や性教育を受けられること、妊娠・出産に関する適切なケアを受けられること、避妊や不妊に関する情報を得ること、性感染症などの疾患の知識を得ること、ジェンダーなどによる差別がないこと、ドメスティックバイオレンス(DV)や性暴力について正しい知識をもって行動できることなど、多岐に渡ります。

妊娠・出産に関わる権利なので、女性だけの問題と受け取られがちですが、男性ももちろん、性別にかかわらずすべての人に関わることです。

―日本の現状をどのように捉えていらっしゃいますか。

杉山さん:日本における妊娠・出産は、母児にとって、世界的にみてもトップクラスの安全を享受できるようになっています。一方で、子どもへの性教育が不十分であること、女性に対する暴力が増えていることなど、課題もたくさんあります。

背景に、ジェンダーの不平等があると感じています。リプロダクティブ・ライツを尊重するためには、ジェンダー間の平等が欠かせません。リプロダクティブ・ヘルスの概念は、女性の地位向上にもつながると考えます。

リプロダクティブ・ヘルスという全体の概念はまだまだ普及していません。しかし、多くの方が、子どもへの性教育、避妊や不妊、DVや性暴力のことなど、性と生殖に関する問題が山積していることにお気づきのはずです。まず身近な問題を考えることで、リプロダクティブ・ヘルスへの第一歩にしていただきたいと思います。

幼児期からの性教育の重要性

―先生は小学生や中学生に向けた性教育にも力をいれていらっしゃいますね。

杉山さん:子供たちのリプロダクティブ・ヘルスを守るためには、性と生殖に関する教育が欠かせません。それは、自分が大人になるまでずっと役立つものであり、自分のパートナーと子どもを守るためにも有用な知識とスキルになります。

小さい頃から継続して性教育を受けることで、正しい知識を身につけ、行動につなげていくことができます。そのお手伝いをしています。

10代の妊娠は多くが望まれたものではありません。20歳未満の女性では、年間14,000件を超える人工妊娠中絶が行われています。そのうち、200件あまりが15歳未満の子どもたちです。望んではいなかった出産を経験している子もいます。

望まない妊娠は、確実な避妊方法の知識を持ち、行動に移せていれば防げます。だからこそ、性交開始年齢より前からの教育が必要です。妊娠中絶は、女性自身を深く傷つけます。若年出産や望まない出産は、子どもの貧困や虐待につながる可能性も高くなります。子供たちに悲しい経験をさせないためには、性教育が重要だということを強調したいと思います。

―性教育はどのようなものなのでしょうか。

杉山さん:4,5歳から性教育は必要だと考えています。自分の大切なところ(プライベートゾーン)がどこか、そしてプライベートゾーンを守るということを教えます。大切なところだから、誰かに見られたり触られたりしてはいけない。誰にでも見せたり触らせたりするものでもない。

それを教えられているだけで、もしもの時の危険性が全く異なります。自分の大切なところを大切にすると同時に、相手の大切なところを尊重することも伝えます。

シングルマザーにとって、男児への家庭での性教育は悩みの種だと聞きました。性教育に必要な知識とともに、子どもたちの質問に対する答え方や科学的に説明する工夫などをお伝えする講座が好評でした。他のシンママと悩みを共有できる場も貴重だったようです。このような講座は、今後も取り組んでいきたいと考えています。

―Mimosaでは成人向けの講座も定期的に開催されています。

杉山さん:私も含めて今の大人たちは、子どものころから大人になるまでリプロダクティブ・ヘルスに関する学びをする機会を持っていません。ちゃんと子どもたちに教えられるようになるためでなく、自分のことも大切にできるように、大人に対する「性教育」も必要だと考えています。

―最後にシングルマザー。プレシングルマザーの方にメッセージをお願いします。

杉山さん:女性は、子どもや周りを優先し、自分のことを後回しにしてしまう傾向がとても強いように思います。やっと受診するころには、重篤化している場合も少なくありません。重症になってしまうと、治療が待てなくなります。すぐ入院をお願いしたこともあります。結果として、治療費が高額になる、仕事を休まなくてはならない、子どものお世話をする人を探す時間がとれない、など、本当に大変な状況に陥りがちです。

そうならないためにも、予防が大切です。早期発見も予防のうちです。健康を維持するための情報をキャッチして、行動に移していきましょう。そして、決して独りで頑張りすぎないでください。誰かを頼ってみましょう。意外といろいろな人が助けてくれるはずです。健康な笑顔が、あなた自身のためにも、お子さんのためにも、とっても大切です。

杉山先生のコラムが2019年12月よりシンママStyleにて始まります。気になる体の話、子どもの性教育、医療の話、老後について等、乞うご期待ください!

【プロフィール】

杉山伸子さん
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本女性心身医学会認定医
日本医師会認定産業医
Mimosa代表
【ホームページ・お問い合わせ先】
https://mimosa-donna.net/

☆告知☆
2019年12月14日
Mimosaによる健康講座が大阪にて開催されます。
第一部 子どもに伝えたい いのち・からだ のお話
幼児期からの性教育
第二部:がんは遺伝する!?
がんの遺伝を考えるはじめの一歩をご一緒に
参加費:各講座 500円
会場:大阪市中央区大手前1丁目3番49号 ドーンセンター
【詳細申し込み】
https://coubic.com/mimosa-donna/598772

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カテゴリ:特集

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