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一方的な「雇い止め」通告を受けた経験も…… シングルマザー、元派遣労働者が語る非正規労働者の実態

れいわ新選組所属 渡辺照子さんインタビュー 前編

 

シングルマザーとして、派遣労働者として、さまざまな苦労を経験してきたというれいわ新選組所属の渡辺照子さん。2019年参議院選挙に立候補して派遣労働問題について熱く訴えていました。シングルマザーとして頑張ってきた渡辺さんは、これまでどのような仕事をしてきて、どのような理不尽な思いを抱えてきたのでしょうか。前編の今回は、渡辺さんの実体験をうかがっていきます。(聞き手/編集部 文/財部 寛子)


渡辺 照子(わたなべ てるこ)さん
れいわ新選組所属。1959年生まれ。1980年武蔵大学中退、出産。25歳のときに2人の子どもを残して配偶者が失踪。保育園の給食調理、保険営業などの仕事を経て、2001年に派遣労働者として勤務したが、16年8ヵ月後、一方的に雇い止め通告を受ける。現在、れいわ新選組に所属し、非正規労働者の待遇・賃金格差などについて、街頭宣伝なでで問題提起をしている。主な共著に『シニアシングルズ 女たちの知恵と縁』(大月書店刊)などがある。

 

シングルマザーのなかでも最もハンディが大きかった

 

―渡辺さんは、シングルマザーが働く環境も含め、非正規雇用と正規雇用の従業員の間に、待遇や賃金の大きな格差があることについて問題提起されています。ご自身の経験からこういった問題に取り組まれているそうですね。

渡辺さん 私は大学を中退して未婚のまま2人の子どもを出産しました。25歳のときに、相手が失踪し、シングルマザーとなりました。シングルマザーと一言に言っても、実際にはヒエラルキーが存在しているんですよね。私は最も階層が低く、少数派のシングルマザーでした。

―シングルマザーのヒエラルキーとはどういうことですか。

渡辺さん 社会的に最もサポートが厚いのが夫と死別したシングルマザーです。その次が離婚、その次が非婚と、シングルマザーの社会的地位が階層化されるんです。たとえば、死別であれば、遺族年金を受けることができます。住宅ローンを組んでいる場合は、その後のローンの返済が不要になる場合もあります。単純に離婚した場合は、ケースにもよりますが相手から養育費を得ることができます。このように考えると、私のようなシングルマザーは非常に大きなハンディを負うことになります。

―仕事をするうえでもハンディは大きいですよね。

渡辺さん もちろんです。大学中退で仕事の経験なし、学歴なし、女性、子どもあり、配偶者なし。このように重層的なハンディを負っていると、雇用市場では極めて不利な存在です。一般企業へ就職の応募をしても書類審査で落とされることも多々あります。採用されたとしても職務経験がないためになかなか自信を持って働くことができません。

 

正社員以上の仕事をしながらも正社員にはなれず

 

―渡辺さんは、どのような仕事を経験してきたのですか。

渡辺さん 最初は近所のスーパーで働きました。しかし、子どもを育てながら民間の会社で働くというのはなかなか厳しい部分があります。そこで、公立の職場の方が育児に関しては多少の配慮が得られるのではないかと考え、公立保育園の給食調理の仕事に就きました。そこで5年間働きましたが、子どもが保育園を卒園した同時にすっぱり辞めました。

―それはなぜですか。

渡辺さん いじめがすさまじかったんです。いくら安定した公務員職であったとしても、こんな場所で一生を費やすのは良くないと思いました。

―とはいえ、お子さんはまだまだ小さかった時期ですよね。その後はどうしたのですか。

渡辺さん 友人の紹介で、生命保険会社の営業を始めました。しかし、ノルマも厳しく、安定した雇用は確保されない状態でした。その後も仕事を転々として、2001年、41歳のとき、初めて派遣の事務の仕事にありつけたのです。派遣の仕事は正社員の仕事と比較すると格差はありますが、それまで安定しない仕事を経験してきた私にとっては、自分主導でできるデスクワークがすごくまともな仕事に思えました。それから16年8ヵ月の間、その派遣の仕事を続けました。しかし、仕事内容には不利な点が多かったと思います。

―具体的にはどのようなことですか。

渡辺さん 2015年に労働者派遣法(以下、派遣法)が改正される前は、「専門26業務」というのがあって、派遣業務が限定されていました。事務も事務用機器操作という業務で「専門26業務」のひとつとされていました。ワードやエクセルを使って、文章を入力したりグラフを作成したりする仕事です。ところが、それ以外の仕事もやらざるを得ませんでした。たとえば、お昼休みにみんなで一緒に注文したお弁当代金の回収、お客様へのお茶出しなど、いわゆる庶務や雑務です。さらに、私が勤めていた会社は海外からのお客様が多かったため、彼らのアテンドもしていました。英語を話す必要もありました。

―派遣業務の職務の範疇を完全に超えていたわけですね。

渡辺さん そうなんです。一般職の女性社員がやらない、やれないこともやっていたわけですから、私としてはやらざるを得ない仕事でした。ただ、専門的な仕事に関してはおもしろかった部分もありましたけどね。

―しかし、正社員ではないために、待遇や賃金とのズレが生じてきますよね。

渡辺さん 私が正社員になるだけの資格も実績もあるからと、会社の上層部に推進状を書いてくれた上司の方もいました。しかし、「事務の派遣は正社員にする予定はない」という一言で却下され、その前後から私はいじめに遭うようになりました。残業を月に100時間するようなこともあり、帰って寝るだけというような状態にもなりました。そんななかで、私はさまざまな資格をとるための勉強をしたり、通信制の大学に入学したりもして、与えられた環境のなかで精一杯頑張っていました。

 

16年8ヵ月勤めた企業から雇い止め通告を受ける

 

―そんな状況のなかで、いわゆる「2018年問題」の「雇い止め」の通告を受けたわけですね。

渡辺さん 雇い止めは一方的に行われました。理不尽な雇い止めに対して、私は世間に向けて声をあげました。しかし、声をあげたことによって多くのバッシングを受けることになりました。バッシングの内容は、「“事務”という職種自体が絶滅危惧種。永遠に続くと考えていたのが甘い」「手取り22万円という給料は能力を評価したもの。そういう評価しか与えられていないことに気付くべき」「そもそも17年間雇ってくれた会社を切られた瞬間に悪口を言い出すのは……」「被害者意識が強いが、もともと自分も納得して契約を交わしていたはず」などなどです。

―問題はどこにあると考えますか。

渡辺さん 世間では、法律が悪いような言い方をする人もいますが、企業側の意識の問題だと思います。なぜなら、2013年に労働契約法が改正された目的は、長年勤めている有期契約の労働者の労働の安定化を図ることだったからです。

―「無期転換のルール」ですね。有期労働契約者が5年以上働けば、企業に無期労働契約を申し込める制度です。

渡辺さん 企業は無期雇用を避けてコストを削減するために、そのルールが適用される前に多くの派遣労働者を解雇したわけです。つまり、企業側が法律の裏をかく形になったといえるでしょう。

―シングルマザーのなかにも、渡辺さんと同じような思いをした方も多いと思います。この派遣労働の問題、そしてこれからシングルマザーはどうしていけばいいのか、次回、詳しくおうかがいします。

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