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子どもファーストの社会へ 子ども達を孤独と孤食から守るシングルマザーの応援団長大津たまみ

現在我が国には100万人以上の母子家庭があり、その中で母子家庭の2人に一人が貧困、平均年収は170万円とされ貧困率は6割を超える結果となっている。(2010年度 国税調査)

 

何故そうなるのか。離婚時に安定的な職に就いているシングルマザーは少なく、小さい子どもを抱えて一からの職探しとなる。しかし住居がないと仕事が探せない、仕事がないと家は借りられない、住所がないと保育所に預けられない、子どもが預けられないと働けないと何から手を付ければよいのか分からないような現状は続いている。

 

名古屋にあるシングルマザー専用シェアハウス「リンクリンクのパークリンク」ここはシングルマザーの住まいというだけでなく、シングルマザーの自立のための「スタート地点」としてシェアハウス運営をしている。

 

住居の確保というだけではなく、リンクリンクのパークリンクはシングルマザーに憚る3大問題『仕事・育児・住まい』という悩みを複合的に解消する場所である。運営する株式会社リンクリンク代表大津たまみさんにお話しを伺った。(取材・文:浦邊真理子)

 

―株式会社リンクリンクをはじめられたきっかけを教えてください。

大津さん 私は息子が小学四年生の時に離婚し、シングルマザーとして生きてきました。お掃除や家事代行の仕事をメインに行う株式会社アクションパワーをはじめ、プロの教育を行う一般社団法人日本清掃収納協会、物・心・情報の整理をする一般社団法人生前整理普及協会、女性起業家の活躍の場の提供やセミナールーム運営を行う株式会社アクションラボ、そしてシングルマザーの自立支援を行う株式会社リンクリンクなど、現在5つの会社の代表をしています。

仕事が軌道に乗り、私自身も貧困状態から抜け出し安定してきた2016年6月、社会貢献事業としてシングルマザーの子ども達が社会とつながるという願いを込めて非営利団体 株式会社リンクリンクを設立しました。ずっと夢だった自立支援の視点から考えたシェアハウスの運営とお仕事紹介を行っています。

私がシングルマザーとなって10年以上経ちました。息子も今は成人し私の一番の理解者であり支えですが、子どもが母親を求めている頃に一緒にいられる時間が少なく、息子にたった1人で食事をさせていたことを思い出すだけで辛く、胸が苦しくなります。

シングルマザーとして懸命に働いてきました。子どものためにも働かなくてはいけない。しかし、子育てとバランスがとれないことが何よりもジレンマでした。

子どもが学校から帰った時に「おかえり」と言ってくれる人がいない。一人で食事をとる「孤食」。共通する「孤独」を問題視しています。寂しさは色々な問題に発展する可能性を含んでいます。

そんな私の経験からも、様々なサービスを提供してきました。忙しく働く女性が子どもとの時間を過ごせるための家事代行サービス、その中に「おかえり」サービスを行っていました。お子様が帰宅する時間にスタッフが在宅し迎えるというサービスです。リンクリンクのパークリンクでも帰った時に誰かが迎えてくれる環境を作っています。

そして、子どもの体を作る食事なのに、貧困や親の不在のためにポテトチップス一袋が夕飯という状態の子どもがいる現実に目を向け、孤食を排除するようにしています。一人で栄養バランスの悪いご飯を食べることは、体だけでなく精神も蝕みます。

リンクリンクのパークリンクでは皆で大きなテーブルを囲み、栄養バランスの整った食事を一人ではなく大勢で食べることにこだわっています。

 

明るさとパワフルさのなかに優しさを感じる太陽のような女性。大津さん/取材時

 

リンクリンクパークリンクは生活を立て直すスタートの場所

 

―リンクリンクパークリンクへ入居するにはどうしたらよいのでしょうか。

大津さん リンクリンクのパークリンクには家賃ゼロから、保証金敷金礼金なども必要なく入居できます。これはDVなど緊急性がある場合、仕事がない状態で困っている場合でも子どもと健康な新しい生活をスタートできるように応援したいと思っているからです。皆で集まり、悩みも分かち合う、励ましあい、助け合い一緒に子育てをする。

 

生まれてきてくれて有難う 定期的に行う「私だけのバースデーケーキ」のプレゼント/提供 株式会社リンクリンク

 

精神的な傷をいやし、元気を取り戻してほしい。そして、仕事に就き子どもの親として自立する。そのための基盤つくりのための場所としてリンクリンクのパークリンクは存在しています。子どもたちへの食育、イベント、チャイルドケアだけでなく、シングルマザー向け座談会 勉強会などの応援体制を整えています。

他にも、共同生活だからこそ必要な一人になれる場所、一人で泣ける場所として個室にロフトも用意しています。

しかし、ただの「シングルマザーの逃避場」ではありません。自立し、子ども達と幸せに暮らしていく基礎を作る場所と考えています。きれいごとではなく、母親が自立することが、何よりもひとり親家庭にとっては必要不可欠だからです。

家賃はスライド式で上がっていきます。それは仕事を見つけて、自立していって欲しいから。仕事がない人も私たちがフルサポートをして、就職のお手伝いをします。自分で稼いで子どもと暮らしていく、頑張る母の背中を見せ、そして子どもの夢を叶えてあげられる母親になる支援をします。

そうして自立してシェアハウスから「卒業」してもらうことを目標としていますので、入居期間は決して長くはありません。2年で卒業を目標としています。(定員5~6世帯、今までの入居者数20世帯 平均滞在半年から1年期間 ※再婚、復縁、将来の介護も考え実家への転居あり )そして卒業されてお部屋に空きが出れば次の入居申し込みの方と会い、お話しをします。

私たちは就職し自立することを約束していただき、共同生活を営めるか、シェアハウスのルールなどをお話しします。

「守れるルール作り」を行い、掃除片づけを徹底しています。私はきれいな環境がどれほど大切かを分かっている掃除整理収納プロフェッショナルです。きれいな環境は乱れた習慣を治し、精神衛生を整えることを身をもって体験していただきます。 子どもに誤魔化せない、嘘をつかせない生活の基礎でもあると考えています。

 

全ての活動は私の実体験から

 

―現在までに5社も興し、10冊の本を世に出し、プロデュースしたお掃除グッズなどは爆発的人気、ほかにも企業スポンサー、愛知大学の学生さん、様々なサポーターを集められ、シングルマザーの子どもたちを社会全体でサポートする体制を始められています。活動の秘訣、無尽蔵のパワーの源はどこにあるのでしょうか。

大津さん 私の事業はすべて実体験から感じた必然性から始まっています。私が離婚をしたとき、まず仕事を探し就職活動をしました。何社面接を受けても不採用ばかり。

働きたくても小さな子どもを一人で育てている事を理由に断られる日々が続き、経済的にも困窮し「こんなに雇ってもらえないなら、働く場所を自分で作ろう」と、お掃除・お片づけの会社 株式会社アクションパワーを設立しました。シングルマザーの就職の困難さは誰よりも知っています。

だから職業紹介の資格を取り、シングルマザー支援に協力的な企業を募り、シングルマザーへ仕事を紹介しています。お掃除も生前整理、女性経営者の応援、全て「経験」から誕生しました。必要なのに、世にないことを作っていく、当事者として気持ちが分かることからスタートしています。

私は企画立案、表現をすることが得意分野です。でも苦手で出来ないこともあります。得意分野、それぞれの人の強みを合わせて、みんなで集まり大きな力に変えて解決していく。できることをコツコツやっていくことが信条です。

 

子どものお母さんはあなたひとり 変わりはどこにもいない

 

―大津さんは「シングルマザー支援」ではなく、「シングルマザーの子どもの支援」と公言されておられます。

大津さん 私の想いはシンプルです。子どもの支援がシングルマザーの支援に繋がっているのですが、シングルマザーのお母さんたちには厳しいとも言われています。

なぜならば、お母さんがしっかりしないと、子ども達の未来は変わりがありません。子どもは親の背中を見ている。「あなたがしっかりしないと 子どもはどうなるの?」といつも応援叱咤しています。リンクリンクのパークリンクは決して安住の地ではありません。

お母さんが働かずに保護と養育費で生活していたら、子どもは「働かなくても生きていける」と思います。将来どうなると思いますか?母親には子どもの未来に対して責任があるのではないでしょうか。

「産まれてきてくれてありがとう」子どもの誕生時に感じたその気持ちを、忘れてはいけないと思います。

 

シングルマザーで憧れられる先人の背中がなかった。
応援団長として その背中を示したい

 

―2016年度「みんなの夢アワード」にて、「子どもたちを孤独から救うシングルマザーの応援団長になる」という夢で大賞に 輝いておられます。

2016年度「みんなの夢アワード」/提供 株式会社リンクリンク

 

大津さん 私自身がシングルマザーとなって困難であったことは、十数年経った現在でもそんなに状況は改善していません。そして私がシングルマザーとして困ったときに道を示してくれる先輩のような存在があまりにも居ませんでした。

一人親世帯数も増加を続け、貧困の子どもが増えて悪化をしている状態といえるかもしれません。株式会社リンクリンクの経営目的は、「一人でも多くのシングルマザーの子ども達に夢と希望の未来をつくる支援を行うこと」です。

母子家庭の貧困率からみても分かるように、経済的困窮は子どもの学力、夢、未来の可能性を奪う可能性が極めて高くなります。そうならないように、シングルマザーに旗を振る役目だと考えています。

 

これからは「パッチワークファミリー」が必要

 

―今後の展望を教えてください。

大津さん これから血縁関係を超えたつながりが求められる時代になると思います。現在問題になっている孤独死は、孤独でなく孤立死だと思います。シングルファミリ―もさらに増えていくでしょう。世の中に蔓延している「孤立」を解消するには、泥臭くて面倒くさいけれど、「他人であって他人じゃない」関係、血縁でない家族「パッチワークファミリー」が必要だと考えています。大きなテーブルに皆で集い話す、笑う、交流する必要があるのではないでしょうか。

今後はシェアハウスのみならず、社会問題である「空き家」を「シングルマザーの子どもたち」の問題解決に利用した取り組みをしていきたいと考えています。社会問題をつなぎ、人と人とをつなぎ、できることをコツコツと問題解決へ取り組んでいきたいと思っています。

 

 

―編集後記―

大津さんに会った方はだれもが口をそろえて「明るく、パワーと感謝にあふれていて、元気をもらった」「やる気をもらった」とおっしゃいます。

私も初めてお会いし挨拶をした場で驚くほどのパワーを頂きましたが、後日知るところによると、なんと愛するお父様のお通夜の翌日だったとのこと。そんなことは微塵も周囲に感じさせない明るさと気配りでした。この人間力、その元気とパワーの源を伺ってみたいと取材を申し込みました。

当日、「私のパワーの源は息子からの手紙」と宝物を見せてくださいました。そこには思春期の息子さんからの愛にあふれた感謝の言葉がありました。

「母親はあなただけ あなた以外自分を育てられなかった」と、大津さんがシングルマザーへ伝えるメッセージと同じ内容が、そして文末にはストレートな愛の言葉がはっきり書かれていました。

 

 

 Profile

大津 たまみ (おおつ たまみ)さん

1970年(昭和45年)生まれ 愛知県出身
大津たまみ
アクショングループCEO
株式会社アクションパワー 取締役会長
一般社団法人生前整理普及協会 代表理事
一般社団法人日本清掃収納協会 会長
株式会社アクションラボ 代表取締役
株式会社リンクリンク代表取締役