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「困っている母子を、命を救いたい」  介護業界の革命児による「仕組み」で挑む母子支援

 

兵庫県宝塚市を中心に自立支援特化型デイサービスを運営する株式会社ポラリス(以下ポラリス)。以前に紹介した、全国で初めて企業が運営する「育・職・住」の3つをそろえたシングルマザー「ママ幸(さち)プロジェクト」(以前の記事はこちら)の運営会社である。

 

今回の取材記事では、親子を救う画期的プロジェクトと、現在までに450名以上を介護保険から卒業させた自立支援特化型デイサービスを運営するポラリスの代表である森剛士氏にお話しを伺いました。(取材・文:浦邊真理子)

 

4歳まで籍に入れられていなかった。―すべてのベースは自身の生い立ちと経験から

 

―何故シングルマザーの支援を始めたのでしょうか。

森さん ずっとシングルマザーの支援をしたいと思っていました。理由は私の生い立ちからです。私は外科医の長男として誕生しましたが、幼少期より実母からDVを受けて育ち、思春期に自分が4歳まで両親の戸籍に入れられてなかったことを知りました。理由は分かりませんが、自分は望まれていなかった命ではないか、生まれてこなければよかったのではないかと大変悩み傷つきました。その後両親は離婚。突然母親が居なくなり、父方に育てられました。

―外科医だった森氏が高齢者向けデイサービスを始められたきっかけは?

森さん その後外科医になった私は、父方祖母の脳梗塞発症を期に様々な問題と直面しました。祖母は発症後1年もすると「病院ではもうできることがありません」と入院先から退院を勧められました。家や老人ホームなどに移ってもこけると危ないからと、歩けるにも関わらず車椅子での生活を余儀なくされます。家族もどうしてよいのか分からないので医師の指示に従い、そのまま車椅子の生活か場合によっては寝たきりとなってしまいます。歩かないと状態はどんどん悪くなる、じっとしたまま動かないのはよくないとわかっているのに、他に選択肢がない、居場所がない。

日本の医療保険制度に疑問を感じ、大学の医局をやめ、リハビリ専門の病院に就職をして祖母を患者として引き取りました。

リハビリテーションの世界に身をおくことで、慢性期患者(※病状は比較的安定しているが、治癒が困難で病気の進行は穏やかな状態が続いている時期の患者)や虚弱高齢者(※介護保険法に基づく要介護認定で自立と判定され、要介護・要支援の状態ではないが、心身機能の低下や病気などのため、日常生活の一部に介助を必要とする高齢者)など、いわゆる「リハビリ難民」と呼ばれ行き場がないひとが数多いること、またそのような方々は要介護認定を受けて自宅や施設での介護を行うものの、車椅子の使用や寝たきりなど行動が制限された生活をされているのを目の当たりにしました。

現在の日本の病院経営は、3ヶ月で患者を入れ替えていくことが一番効率がいいとされています。日本の医療保険制度では病院は1年未満で次の患者さんに来てもらわないと経営が成り立たない仕組みになっているからです。

行き場のない「リハビリ難民」の状態はどんどん悪くなる。要介護度が上がり、社会保障費など国の負担も増えていく。国と個人どちらにとってもよくない仕組みをずっと続けていていいのかと思いました。

そこで国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授が研究していた「パワーリハビリテーション」という医療用マシン用いた低負荷反復運動のマシントレーニングを取り入れました。この「パワーリハビリテーション」と併せて適切な水分・栄養補給を指導することにより、生活動作能力や認知能力を向上させるのが「自立支援介護」と呼ばれる介護メソッドです。これまでの介護とは全く異なるメソッドを取り入れることで、医療で出来ないことを介護(デイサービス)で行い、問題解決の道を探りました。

ポラリスのプログラムは、医療用マシンを用いた「パワーリハビリテーション」や、適切な水分や栄養補給の指導を通じて生活動作能力や認知能力を向上させる、「自立支援介護」と呼ばれる今までの介護とは全く異なる最先端のメソッドです。

寝たきり状態から仕事に復帰できた、寝たきり状態からからゴルフの練習ができるようになった、脳梗塞から4か月で歩けるようになりバージンロードを娘さまと歩くことができた等、感動ストーリは現場で日々起こっています。

それらの取り組みは社会保障費の削減に高い成果をあげ、国からも高い評価を得ています。国も、要介護認定を受けていた方も、しいては税金の軽減にもなりますので国民全員がハッピーになる仕組みではないかと考えています。

 

ここで育てばどこでも求められる人材になる
最先端の介護スキルを身につけることができるポラリスの自立支援介護

 

―450名以上を介護保険から卒業させた実績をもち全国からポラリスメソッドが注目されるなか、何故今シングルマザーの支援を開始したのでしょうか。

森さん 自立支援特化型デイサービスから始動しましたが、自身の経験を踏まえていつかシングルマザーの支援をしたいと考えており、このような住宅支援の構想は4、5年前からアイデアを固めていました。また住宅支援以外にも、ポラリスで今までの介護とは全く違うノウハウを身に着けるということは、「手に職」をつけることができるという違う側面からも「支援」できると考えています。

実際にポラリスデイサービスセンターのスタッフはシングルマザーの比率が高いと感じています。そのうえ現場は慢性的な人手不足なので、このような支援を行うことで、高齢者、シングルマザーのどちらの「自立支援」にもつながる得策ではないかと考えました。

色々リサーチする中で、住宅を提供するだけでは問題解決にならない、仕事(収入)や保育など様々な支援を複合的に行っていかなければ、問題解決にならないことを学びました。

そこで考えたのが、企業主導型保育園を施設内で運営して(保育料無料)「育、職、住」を満たし、住居費の個人負担を3万円(月額・税別)に抑えること。また、職場と食堂も同じ場所にあることで交通費、食費も節約できる仕組みにしました。金銭面や体力面、精神面の負担が極力少ない環境で、手に職をつけ、いずれは自立、そして「卒業」する礎にしてもらいたいと思っています。

 

未婚の母にもこのプロジェクトを知ってほしい。かけがえのない命を諦めないで。

 

―既に未婚の母である職員の方の入居が決まっていると伺いました。

森さん 過去に私自身が「生まれてこなかったらよかったのでは」と悩んだことから、また医師としての立場からも中絶には絶対反対をしています。シングルマザーで育てられないからと諦めてしまう命を救いたい。もし諦めようとしているなら、ここに来てほしい。

そんな想いからシングルマザー向け支援がずっと頭にあったなか、あるとき知人の女性が未婚で妊娠をしました。産むべきか、産んだ後でも育てていけるのか、私に相談がありました。絶対産むべきだ、ここで働いて子どもを産んで頑張ってほしい、そう説得しました。彼女が入居者第一号となることが決定し、「ママ幸プロジェクト」のリーダーとして頑張っています。

私のように、「親から必要とされていない。」と傷ついた経験をしている人はたくさんいます。私は自分を客観的にとらえることができるよう、トレーニングをしました。しかし通常、そのような経験は簡単に受け止められることではないと思います。
自分を大切にできず自暴自棄になってしまう人、自殺してしまう人、不幸が連鎖してしまい我が子を傷つけてしまう人。そんな人を一人でも少なくしたい思いです。

 

社内で賛成ゼロ それでもやると決めた。

 

―シングルマザーの支援事業を始めることは社内で大反対だったとのことですが。

森さん そうですね。社内からも社外からも反対意見はありました。別事業からこの業界にはいってくるなというようなコメントもいただきます。

それでも「救える命」を救いたい。その思いでこのプロジェクトを進めていく覚悟を決めました。介護業界は慢性的な人手不足です。それは、介護に対して「辛い」「苦しい」「重労働」なのに「収入は低い」という悪いイメージがあるからだと思います。しかし私たちポラリスは、今までの「お世話型」介護のイメージとは全く異なる、「見守る」「能力を引き出す」「寄り添う」介護を行います。これは、今までの介護の在り方を変える事業です。

ポラリスで働いていただき子どもと共に当プロジェクトを卒業する時には、介護スタッフとして全国どこへ行っても求められる人材になります。

 

完成したばかりの施設お披露目

 

宝塚市旭町に誕生したポラリスの新社屋。完成したばかりの3階の住居部分を見学させていただきました。

 

(画像:各部屋につながるモニター付きインターフォンや、指紋認証など厳重なセキュリテイ)

(画像:広い玄関、明るく水回り完備の個室)

(画像:食事や団らん場所となる共用リビングスペース)

 

―今後のビジョンをお聞かせください。

森さん ポラリスとしては、日本の介護サービスの輸出をアジア各国へ促進させたいと思っています。シングルマザー支援では、まずはこの施設を成功させて第二号、三号を作りたい。まだまだやりたいことはたくさんあります。職場(デイサービス)兼シングルマザーの住居兼保育園、兼本社。この施設を内輪だけで閉じこもったものではなく、町にひらいた場所としていきたいと考えています。

この近くの小学校は私の子供たちも通った小学校です。ポラリスデイサービスセンターを卒業した高齢者の方にも働いてもらい、施設内に地域の小学生を対象とした学童保育を設けたいと思っています。宝塚に生まれ育った私は、宝塚の町をよくしたい、恩返しがしたいという思いも強くあります。

まだまだ難しいですが、介護に関しても、シングルマザーにしても、「住み慣れた地域で」「健やかに」暮らしていただくことが理想的です。(※「ママ幸プロジェクト」は遠方からのご応募も受け付けています。引っ越し用の立替金制度あり)それには地域とのつながりが必要不可欠だと思っています。今後より一層地域とつながった、拓いた事業を進めていきたいと思います。

 

 

【編集後記】
全てを叶えるなんて無理、全てがWINなんてあり得ない。そんな世俗的な諦めを少しでも持っていた自分が小さく思えるような時間でした。森氏を前にし、ただただ未来を切り拓くパワーを感じました。森氏の生い立ち告白は衝撃的で、何が貴方を動かすのかという問いに余りある回答でした。

貧困、超高齢化社会、介護、低収入、DV、虐待、年金問題、嘘データー、日本の経済成長率、どの若者が未来に希望がもてる?と思うようなニュースばかりのなか、この壮大かつ、親子一組を救うためだけでもあるプロジェクトに「人の命は地球より重い」のだと、忘れかけていた言葉が頭を打ったような取材でした。

 

 Profile

森 剛士さん

医療法人オーロラ会理事長・株式会社ポラリス代表
外科医、リハビリ医を経て高齢者・慢性期リハビリテーション専門のクリニックを兵庫県宝塚市に開設。ポラリスグループをスタートし 地域密着型社会貢献事業として自立支援特化型デイサービスを全国64ヶ所(グループ全体)に展開中。2019年春シングルマザーの住宅、高齢者向けデイサービス、保育園を備えた新社屋が竣工。

【お問い合わせ】
ママ幸プロジェクト 公式URL
ホームページ http://www.mamasachi.com/
Facebook https://www.facebook.com/mamasachi.pj
お問合せ先(応募者様用) info@mamasachi.com 藤原宛
株式会社ポラリスhttp://www.polaris.care

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