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シングルマザーの住まい探し 唯一の専門サイト『マザーポート』

ひとり親家庭のリビングライツ=「居住の権利」を守るために誕生したインターネットサイト『マザーポート』。2015年に誕生した全国の母子シェアハウスの情報が一同に集まるサイトである。

運営するのは一級建築士事務所秋山立花の秋山怜史氏。秋山氏はシングルマザーの住まいに精魂を注ぎ奔走している。何故、一級建築士の男性が? 秋山氏にお話しを伺った。(取材・文:浦邊真理子)

 

 

日本で初めての、子育てと仕事を両立するシェアハウス、ペアレンティングホームの誕生

 

―自己紹介をお願いします。

秋山さん 秋山怜史です。1981年生まれ神奈川県出身、一級建築士事務所 秋山立花(あきやまたちばなhttps://akiyamatachibana.com/)の代表を務めています。父方の姓である「秋山」と母方の姓である「立花」を繋げて、屋号としています。ペアレンティングホームの企画、マザーポートの運営もしています。


(画像:朗らかに話す秋山氏)

 

―何故シングルマザーの住まいに特化した事業が多いのですか?

秋山さん 私はシングルマザー家庭に育ったわけでもなく、自分自身が当事者という訳ではありません。何故シングルマザーのための事業をとよく不思議がられます。

私はせっかく建築士になるのであれば、早く独立したいと考えていました。しかし、この業界は労働時間も長く、小さな設計事務所では賃金も低い。当時から、子育てと仕事の両立ができない社会はおかしいと考えていたのですが、建築業界でも、子育てと仕事の両立を実現するのはかなり難しい状況だと思っていました。

それに、建築士に限らずですが、賃金が低いとどうしても共働きになる。男女問わず、子育てと仕事の両立ができなければ、生きていけないのに、日本の社会では、一向に女性は小さな子どもが居ながら働くことは犠牲が大きく、子育てと仕事を両立できるような社会は実現できていません。こんなに長年言われてきているのに何故実現できないのか、と感じていました。

子どものころに、警察官僚だった祖父と、社会や政治のことについて聞いたり、話したりしていたことも影響しているように思います。「おかしい」と思うことに蓋をして、何もしないで諦めていることはできませんでした。

建築というのはとても社会性の強いものですが、その社会性の高いものを作る仕事なのに、建築士と一般の社会や生活が乖離しているような距離を感じていました。もっと社会や生活に身近な建築士でありたい、社会の問題をよりよくしていくことが建築士の職能のはずだ、そう考えていました。

どんな暮らし方をしたら、もっと子育ても仕事も両立しやすくなるのだろう。どんな暮らし方をしたら、もっと親子がいきいきと輝けるのだろう。子育ても仕事も楽しく両立するための住環境を整えたい。そんな問いのひとつの答えが子育てを共有するシェアハウスでした。

―そこからシングルマザーの活動につながっていったのですね。

秋山さん 社会問題を解決したい、こんなことがしたいと出会う人々に語っていたんです。

そして出会ったのが保育園を経営されている石尾ひとみ氏と不動産業やシェアハウスをされていた細山勝紀氏。同じようなことをしたいと思っているメンバーが集まり、誕生したのが日本で初めての、子育てと仕事を両立するシェアハウス、ペアレンティングホームです。

 

日本に一つ、シングルマザーのためのお部屋探しサイトの誕生

―日本初のシングルマザーのためのシェアハウス「ペアレンティングホーム」と、
『マザーポート』の関係を教えてください。

秋山さん 第一号のペアレンティングホームは神奈川県高津区に2012年にオープンしました。初めての試みとあり、メディア取材も多く注目されたので入居申し込みも順調でした。しかし初期の入居者の方々が自立し退去していったり、第二弾、第三弾のペアレンティングホームや他の事業者さんによるシングルマザー専用のシェアハウスが出来ていくなかで、入居者募集は難航しました。フェイスブックや専用ホームページなどで宣伝はしていましたが、一般的な賃貸物件とは異なるので集客が難しいという壁にぶつかりました。

「何とかしないと」と思い、2015年に開発したのが、シングルマザーのシェアハウス情報サイト『マザーポート』です。現在で4年目になります。最初は「シングルマザー用のシェアハウス」という存在自体の認知度も低く、閲覧数も少なかった。

しかし、4年目になりようやく月間ページビュー数17,000を超え、毎月数件の問い合わせが入るようになりました。認知され始めたと感じています。今後の目標は少なくとも、現在の10倍のページビュー数を獲得していくことです。

今後はシェアハウスだけでなく、様々な選択肢を用意し、然るべきところに住まいを確保するためのサイトとして成長させていきます。シングルマザーが住まいで困ったときは、『マザーポート』を訪れると解決するというサイトを目指しています。

 


(全国母子居住会議を主導する秋山氏。NPO法人「全国ひとり親居住支援機構」を立ち上げる)

日本はアドレス主義の国、ひとり親家庭のリビングライツ=「居住の権利」を守るために

 

―これからの活動を教えてください。

秋山さん 日本は住所がないと様々な手続きができません。就職ができなかったり、手当が貰えなかったり、身分の証明ができなかったり。とにかくまずは「住所」ありきの社会です。なのに、ひとり親家庭はその住所をまともに確保しにくい状況にいます。

ひと括りに シングルマザー、ひとり親家庭と言っても状況も問題も様々で、必要とされる住居も様々です。多様性に応えた居住を確保するには、事業者同士の連携や行政との協力関係が必要不可欠と考え、NPO法人「全国ひとり親居住支援機構」を立ち上げることにしました。

ひとり親家庭の居住問題はやっと一般的にも問題視されるようになってきました。支援機構がより認知を高め、ひとり親家庭のリビングライツ=「居住の権利」を確立する一因となるよう活動します。

―秋山氏をここまで動かす理由は何なのでしょうか?

秋山さん 「建築家がなんでそんなことをやっているの?」とよく聞かれます。私もなかなか答えに窮するのですが、『縁だから』と思っています。

以前、紛争地域の子どもの取材を続けていたあるジャーナリストの方に、なぜ困難なことなのにこの活動を続けているのかと伺ったことがありました。その方も「かかわったから」、「それは縁だと思う」とおっしゃっていて、それはとても印象に残っています。私もシングルマザーの問題を知り、出会った。だからこそ、続けていきたいと思っています。

私が建築をこよなく愛し、情熱を持って仕事をしている理由と、社会課題を解決していきたいと活動している理由は、突き詰めると全く同じものです。私たちが生活をしているこの社会は子どもたちの未来へ繋がっています。引き継いでいく未来を、より豊かなものにしたいということなのです。

 

 Profile

秋山 怜史(あきやま さとし)さん

昭和56年生まれ 神奈川県立横浜平沼高等学校97期生 野球部主将
東京都立大学工学部建築学科卒業
平成20年〜 一級建築士事務所秋山立花 設立
平成26年〜30年 横浜国立大学非常勤講師
平成27年〜28年 神奈川県地方創生推進会議委員
【お問い合わせ】
マザーポート https://motherport.net/
一級建築士事務所秋山立花
https://akiyamatachibana.com/
ペアレンティングホーム http://parentinghome.net/