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シングルマザーが「すこし助けてほしい」と言える環境を作りたい【後編】

賃貸トラブル専門の司法書士として尽力されながら、著書「2000人の大家さんを救った司法書士が教える賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」も大好評。
コラムや寄稿、講演会と大活躍中の太田垣章子先生。でもその根底にはシングルマザーとして様々な思いをし、法律家として様々な現場を見てきたうえで、自分の役目を全うし、世に恩返したいという気持ちがあるとのこと。

 後悔はシングルマザーとしての経験からの思い、再婚前のアドバイスを中心にお届けします。

前編はこちら

住まいが基礎を作る

 

──シングルマザーの住まいについてはどうお考えですか?

太田垣先生 太田垣先生:私もシングルマザー初期の貧乏だったとき、お部屋を借りる際には、家賃補助がある物件に住みたいと思いました。しかし家賃補助がある物件は申込むのに「年収◯百万円以上」というような規制があるんですよね。

そうすると、私よりも年収の高い人が家賃補助をもらって良いところに住んでいて、年収の低いものは、申し込みすらできないから他の高い正規の家賃を払わなきゃいけない。理不尽だと思いました。

公団のようなところでも、もともと住んでいた人がベンツに乗っていたりとか、不正をしている場合があったりします。本当に住みたいと思っているシングルマザーが住めないという現状があるので、これだけ空き家、空室が問題になっているのだから役所が借り上げて、頑張っている人に安く提供するなど方法があるはずです。

衣食住でいうと、人間の基礎となるもので一番はやはり「住」ではないかと思っています。そこが揺らいでしまうと、生きていく生活の基盤が滅茶苦茶になってしまう。
やっぱり生活の基盤の「住」が安定しないと子どもを育てられないとか、普通に健やかに成長できない。

シングルマザーだから貸すなどではなくて、生活立て直し期間限定など工夫した形にして、有効に空き家を貸し出せば良いのになと思います。

みんなそれぞれパズルの1ピース 自分を責めないで良い

 

──モットーやポリシーはありますか。

太田垣先生 「どんなときも愛を持って接する」です。賃貸のトラブルの場合は、対応する人はいわゆる「困った人」です。
家賃を払っていないとか、クレーマーだったり。良い人か悪い人かって言ったら、悪い人なのかもしれないですけど、悪い人だからといっても、本当の悪ではなくて、何か事情だったりとか、負の連鎖だったり、社会的な背景を背負っているなど、ただ悪いの一括りではないんですよね。

その人たちに「あなた家賃払ってないんだから」って正論で責めても絶対にうまくいかない。
今回は仕方がないけれど、この先少しでも良い方向にいってほしいし、この先も同じことを繰り返さないでいて欲しい。
だからできるだけ、愛を持って接するようにしてます。挫けたり、泣いてしまうこともありますが(笑)。

──ご自身のシングルマザーの経験から、そのような考え方になったのですか

太田垣先生 そうかもしれません。元々は正義感が強く、真っ直ぐで「一生懸命頑張っていたら絶対結果がでる」みたいな考え方でした。
でも離婚経験や試験勉強で、自分がすごく一生懸命生きてきたつもりなのに、なぜこうなっちゃうんだろうとか。こんなに頑張って勉強しているのに、なぜ受からないんだろうとか。

あとはやはり、子どもを授かったことですね。子どもを見ていると、例えば同じ年代の子とかでも、この子はできるのに、何故この子はできないんだろうとか。
できない子のほうが悪いのではなくて、そういうタイプなんだと。レンガを1個1個積み上げていくタイプと、1、3、5、10みたいにできるタイプ、みんなそれぞれなんだなと思って。

そう思えてくると、社会って全部そうなんだと。ジグソーパズルのピースかなと思うんです。

いつもスタッフにも言いますが、私が偉いのではない。私はたまたまトップ的なピース。私だけでは成り立たなくて、私が仕事を取ってくる、それをこなしてくれる彼らがいて、サポートしてくれる人がいてはじめて成り立つわけです。

私の事務所だから、長だからと言って私が偉い、他が偉くないというわけではないということが、年を重ねるほど分かってきて、「世の中で私の使命って何?私のピースって何?」と思うようになりました。

私は学生時代、成績も悪かったし、親も「女が学を持つとろくなことがない」というタイプで、またそれに反発して勉強するのではなく、これ幸いと遊んでいたタイプでした。
そんな私が司法書士になれたというのは、何か使命があったのではないかと思えてきて、使命を果たさないと、罰が当たるんじゃないかって感じています。
みんなそれぞれの使命がある気がします。

「自分なんて」「私のせいで」って、どうしても母子家庭のときは思ってしまうでしょう。それで良いんです。
また、元気になって違うピースになるかもしれない。そのときには、またそのピースで頑張ればいいっていう。みんなそのままでいい。絶対に自分を責める必要もない。

私は、たまたま6年間の極貧生活を経て司法書士試験に合格することができたけれど、あのまま受からない可能性だってありました。
6年目は36歳、毎日睡眠時間も4~5時間でゴールのない勉強の日々、気持ちも限界でした。あのままだったら、私も絶対に心が病んでいたなと思います。

例えばシングルマザーですごく頑張っている人で、なかにはすごく偉い人だけど「私ができたから、あなたにもできるでしょう」とレクチャーする人、それは違うと思うんです。

できる人が元気をあげればいいだけで、できない人が悪いわけではない。できないときは、甘えきったらいい。甘えきって「助けて」って一人じゃ無理ということを、ちゃんと認識しておかないと、できていない自分をまた責めちゃったりする。「みんな頑張っているのに私は…」って。
一人で十分頑張っているのだから「誰か、助けて」っていう声もあげればいいんです。その代わり助けてもらったら、一方的に助けてもらうばかりじゃなくて、いつかまた社会に恩返ししていけばいいのではないかと思います。

社会って回っていくべき所だと思います。

離婚することによって気持ちも元気じゃなくなり、人を信じられないとか、自分を責めるとか色々ありますが、自分を責めても何にも変わらないから、そんな無駄な時間を過ごすぐらいだったら、自分の周りにいる元気な人を誰か見つけて、その人から元気もらうとか。SOSを出すとか。
何かしら動いていたら、絶対誰かから手は差し伸べられる。この人がダメなら次!くらいの気持ちで、アタックしてください(笑)。

愛がないと誤作動する

 

──まずは動かないと何も変わらないですよね。

太田垣先生 たくさんの人を見てきて、特に家賃滞納者のケースなど、結局、愛が足りない人が誤作動起こすのかなと思います。子どもも同じです。愛情って受けられないと、なんか誤作動起こしてしまう。

──さびしさが原因ということでしょうか。

太田垣先生 そのような気がしますね。愛に満ちている人は誤作動を起こさない。みんながまた愛情をくれるし良くなり順調に回るけれども、愛に飢えている人は自分もささくれ立つし、そうすると誰も愛をくれず避けられ、余計に誤作動するというように悪循環ですね。

離婚の相談も多いのですが、何故こんなすばらしい女性が離婚したんだろうとか思う方がたくさんいらっしゃいます。傾向としてですが、離婚する女性は自分への自己評価が低い人が多いように思います。

──なぜでしょう。

太田垣先生 親御さんとうまくいっていない人が多い傾向があるように思います。
例ではありますが、親御さんがきっちりし過ぎていて、女性がきっちりしていても怒られてしまうとか、褒められていない、認められていないので自己評価が低いとか自己否定とか、そういう人が多い気がします。その問題に気がつかないと、結局、同じことを繰り返してしまう。

──再婚したとしても?

太田垣先生 同じスパイラルに入ってしまう。だから、なんで離婚になったのか。絶対に100対0ではないと思います。私もそうだったし、100対0で相手が悪いのではない。
何故、あの人を選んだのかというところの背景を分かったうえでのほうが、再婚にしても、次にいい人と巡り会えるのではないかと思います。

そこを「相手が悪かった」とか「結婚しなきゃ分からなかったから」ということだけで前の失敗を片付けてしまうと、結局、次も同じことを繰り返す可能性も高くなる。
自分も原因が分かれば、これから生きていくことも楽になるんじゃないかなという人が多いように思えます。

──自己評価の低さは、育った環境とか、親の影響みたいなものからきているのでしょうか。

太田垣先生 甘やかされて育つとかでなくて、ちゃんと愛情を受けて育っていると、ちゃんとした愛情を知っているから、変な男性からの愛情は「あ、これちょっと違うかも」と思って、外すんですよね。自分が何となく、自分そのものを受けとめてもらえてなかったとかってなると、そこに気がつかない。

──とても愛されているし分かってくれていると思ってしまうのですね

太田垣先生 反対に、「私だけはこの人のことを理解できる」とか。そのように思ってしまう傾向がある。自分が理解してもらえなかったから、この人のことは私が理解できているとか。
そこでまた危ない人にひっかかっちゃう。その原因を自分でクリアにしていったほうが良いと思います。

シングルマザーの支援の夢

 

太田垣先生 離婚してこの仕事を始めて、私も大変な時にたくさん助けてもらったから恩返ししたい。シングルマザーへの支援願望があります。

昨年「2000人の大家さんを救った司法書士が教える賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」を書かせてもらいました。
この本のドラマ化を願っているのですが、ドラマ化して少しでもお金がもらえたら、10万でも20万でも50万でも、それをシングルマザーの支援に使いたいと決めています。例えば、資格取るときの貸付だったり、様々な活用をしたいなと。

この本は、大家さんや不動産関係者しか、おそらく書店で手に取らないと思います。

しかし、中に書いてあるのはシングルマザーや人間のドラマで社会的な背景も書かれているので、一般の方たちにも関心を持ってほしいなと願っています。
「人の不幸は蜜の味」ではなくて、子どもたちが育ってくれないと税金が入ってこないし、日本が住みにくい国になって行くので、みんな自分達に関わってくることじゃないですか。
身近な問題と知ってもらうためには、ドラマ化すれば一番影響力が大きいのかなと思ってドラマ化を願っているのです。

──こんなことが起きていると、知ってもらうことが必要ですね。

太田垣先生 母子手当をもらっている人って、今は届け出になりましたが当時は1年に1回役所に行かなきゃいけないんですね。ボーイフレンドがいるのかどうかとか、生活がどうかとか、元旦那からなぜ養育費をもらえないのかと尋問を受けないといけない。

──もらえない側でなくて、元旦那側になぜ、決めた養育費払わないのか聞いてもらいたいですね。

太田垣先生 誰かが声を上げないと変わらない。マツコ・デラックスさんと、養育費を払わず責任も持たない男性たちに向けて毒を吐きたいって。それが私の夢なのです(笑)。

 

 Profile
太田垣 章子(おおたがき あやこ)さん
司法書士
平成14年の法改正以降、家主側の訴訟代理人として延べ2000件以上の悪質賃借人対応の訴訟手続きを受託。 トラブル現場に足を運び、悪質者と向き合ってきた実績を基に、情報誌コラムや、全国各地でセミナー講師など多方面にわたり活躍中。
公式ブログ  あやちゃん先生の独り言

 

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章法律事務所
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