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「養育費、もらえなくて当たり前」と思わないで 〜養育費相談サイト『conias(コニアス)』〜

3、4組に1組は離婚をすると言われる時代。一人親が増える中、子どもの養育費が別れた相手から支払われている家庭は、たった2割程度と言われています。子どもの未来を守る養育費が払われない現状を変えるため「養育費の不払い問題」の相談窓口のサイト『コニアス』が2017年に設立されました。

今回は『コニアス』を立ち上げた代表理事の岡秀明さんと、弁護士であり『コニアス』の理事でもある生田秀さんにお話を伺いました。

―『コニアス』は、どのようなサイトなのでしょうか?

岡さん 養育費問題の相談ができるサイトです。相談にきた人はデータベースに自動的に登録されて、弁護士さんが相談内容をみて直接相談にのります。弁護士さんへの相談料も無料です。養育費問題に悩んでいるひとり親家庭と、その力になれる弁護士との架け橋となるプラットフォームを提供しています。

―どんな相談が多いのですか?

生田弁護士 共通するのは「養育費が不払いである」という相談ですが、いろいろなパターンがあります。例えば「調停や公正証書で養育費の金額を決めたが、すぐに不払いになってしまった」とか、「数ヵ月は支払われていたけれど、その後行方をくらました」など。あとは「養育費について決めずに離婚届けを出して別れたけれど、子どもが大きくなって教育費の負担が出てきたので、やはり養育費を払ってもらいたい」という相談などです。

―いろいろな相談があるのですね。一般的に弁護士さんに依頼するのと『コニアス』を経由して依頼するのとでは、どんなところが違うのですか?

岡さん 通常、弁護士に依頼すると、着手金といって初めに10万円~30万円の費用がかかります。これは、結果がうまくいかなかったとしても関係なく費用は発生します。なので「弁護士さんに何十万円も費用をお支払いしたけど、相手から養育費をもらうことはできず、結果的に弁護士さんから辞任の通達をされた」という残念な話も聞きますね。

―「多額の着手金を払ったのに、養育費をもらえない」それなら弁護士さんに依頼しない方がよかったと思ってしまいますね。

岡さん そうですね。そんなリスクを相談者の方が背負わなくて済むような仕組みを作ろうと思ったんです。『コニアス』に登録する弁護士さんたちは、着手金という初期費用にあたるものは取っていません。無料で相談から、実際に案件を始めて結果が出るまで全く費用が発生しません。費用が発生するのは、相手から養育費を支払ってもらい成功した場合です。毎月、養育費は弁護士の口座を経由して振り込まれるので、振り込まれた養育費の30%と消費税を成功報酬としていただいています。安心して相談できる仕組みになっているのかなと思っています。

―素晴らしい仕組みです! ただ弁護士の方に相談となりますと、少々ハードルが高い印象があります。

生田弁護士 我々も、その壁を取っ払うために工夫しています。例えば、相談者の方の多くが平日の昼間に仕事をしていますし、帰ったら育児をしていて法律事務所に行く余裕がそもそもありませんという方も結構多いです。なので、最初の相談は電話で行っていますし、電話する時間も仕事から帰ってくる夕方から夜の時間に対応することもあります。相談者の方が最初の一歩を踏み出すために壁となっているものは、取っ払っていけるように取り組んでいます。

―相談者目線の画期的な仕組みだと思います。どのような経緯で『コニアス』を設立したのですか?

岡さん 以前は金融の仕事をしていたのですが、ずっと家族向けの事業を起こしたいと思っていました。シングルマザーの方にインタビューをする機会がありまして、「今、どういうことに困っているか」という話の中で「養育費」の話が出ました。その方は「養育費」の話をしているとき、あっけらかんとした感じで話をしていたのです。

あまり深刻そうではなかったのが、返って印象深くて…。調べてみると、統計上で養育費はたった2割の方しかもらえていないとか、日本の一人親は先進国の中でも貧困率が非常に高い事を知りました。こんなに養育費をもらえていない人がいることを初めて知りました。

「離婚」は夫婦の都合ですが、関係のない子どもが損害を被るというのが、僕の中ではずっと気になっていました。理不尽なことは世界中に山ほどありますが、たまたま「養育費の不払い問題」が僕にとって、そのうちの一つだったのです。そこで認定NPO法人フローレンスの代表理事である駒崎さんと知り合いだったので「養育費の不払い問題」について何かできないかという話になりました。しかし養育費については、法律の壁があり民間や個人では触れにくい部分だったため、弁護士さんを探すことになりました。そこで駒崎さんの知り合いだった生田弁護士と繋がりました。

生田弁護士 僕は神奈川県の横須賀市を拠点に弁護士をやっています。アメリカ人と日本人の夫婦や、アメリカ人とブラジル人の夫婦など、いろいろな夫婦の離婚問題を取り扱っています。

アメリカ人の方は、養育費について真剣に考えている方が多いのです。なぜかというと、払わなかった場合のペナルティーが日本とアメリカでは全然違うのです。養育費を払わないと、州によっては運転免許が更新できないところや、全米どこで働いていても国が給料を差し押さえるとか…非常にシビアな制度になっています。

しかし、日本はまだ法制度が発展途上の段階なので、日本の弁護士でさえ「養育費の支払いが途中で止まってしまっても、しょうがない」みたいに考えているところが正直ありました。法制度が違うだけで、人の意識にこんなにギャップがあるのだなと感じました。しかし権利の実現をはかるべき私たち自身が「払われなくて当たり前」というように考えてしまっていることが、そもそもおかしい。だから「養育費回収を成功報酬制でやってみたらどうなるかな?」と以前から考えていました。それで駒崎さんと合宿で銭湯に入っているときに同じことを考えていた岡さんのことを教えてもらいました。そして『コニアス』に参加したのです。

岡さん この『コニアス』は、各々が色々な事業活動をしている中で問題意識が芽生え、たまたまそういう考えを持った人間たちが集まってできたというのが始まりです。

―別れ方も多種多様。相手と関わりを持ちたくないから、養育費を受け取ることを迷っている方もいらっしゃると思います。養育費があることでどんなことが変わると思いますか?

岡さん そうですね。親御さんが別々に暮らすのは自由です。ただ、それによって子どもという関係のない人が将来の自由を奪われることは避けたいですよね。やっぱり家庭のおかれている境遇で、子どもはすごく影響を受けると思います。ギリギリの生活をしている人達は衣食住以外の部分が最初に削られてしまいます。例えば、成長にあった服を買う、友達が夏休みにしているレジャーと同じことをする、勉強のドリルを買うなど…だから、養育費というお金がちょっとでも入ってくるというのは、子どもにとって環境は違ってくると思いますね。

生田弁護士 まずは「養育費を払ってください」と伝えることが肝心かなと思います。中には養育費を払おうとしない方もいますが、きちんと払う人だっています。お子さんの人生の中で、「お父さん(あるいはお母さん)がいたんだ」ということをずっと意識してほしいと思っている方は、お子さんに対する愛情も強く、ずっと払い続けてくれます。

いろいろな事情や感情的なことはあると思いますが、「払ってください」と伝えてみることで、それが突破口になることが意外とあると思います。お子さんにとっても、「自分のお父さん(あるいはお母さん)は、そもそもいなかったもの」と感じながら生きていくのか、それとも「離れてはいるのだけれど、自分にはお父さんがいて、自分のことを支えてくれている」と感じて生きていくのとでは、お子さんにとって違いがあると思います。まず一歩踏み出して『コニアス』にコンタクトを取っていただけたらいいのではないかなと思います。

岡さん 一人親の多くの人たちが「養育費は、もらえなくて当たり前」と思っています。「苦しくて当たり前、つらくて当たり前だ」と、一人で背負うことに慣れてしまう。そう思っている方は、あえて「養育費をもらおう」という意識になっていません。そういう方たちにどうやって「養育費」のことをリーチしていくかというところは、これからの我々の課題かなと思っています。

 Profile

岡秀明さん
NPO法人『コニアス』の代表理事。養育費の不払いに対して問題意識を持ち、一人親家庭と弁護士を繋ぐサイトを立ち上げました。 

生田秀さん
『コニアス』に参加されている弁護士であり理事。神奈川県横須賀市に弁護士事務所を持ち、横須賀市中心に活動をされています。