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「生きるのが辛くなる世の中はおかしい」 声をあげたお母さん議員の挑戦

私たちにとって、子どものことは最も気になる問題の一つです。例えば、不登校、発達障害、いじめ問題。シングルマザーも当たり前に抱える問題です。実際に不登校問題に悩みを抱えるシングルマザー、DVの二次被害で子どもが暴力的になってしまう、学校に馴染めない、様々なケースを耳にします。

 

子どもにとって、親にとって、そして社会全体にとっても良い方向へ進むには? 無所属でしがらみのない市民派の議員として「居場所作り」と「教育改革」に日々取り組む兵庫県の西宮市議会議員 田中あきよさんにお話しを伺いました。(取材・文 浦邊真理子)

 

画像:西宮市議会議員 田中あきよさん

 

―西宮市議会議員を務められる田中さんですが、自己紹介をお願いします。

田中さん 田中あきよと申します。家族は夫、24歳、19歳、14歳の3人の娘、実母、紀州犬と子猫です。議員になる前はブライダルやイベントなどの司会業をしておりました。2019年4月の市議会選挙に初当選、6月より議員として任期がスタートしました。関西無所属ネットワークで他市の同じ志の仲間と情報交換をしながら、無所属、無会派で右も左も分からないながらも、日々学んでいます。

それまでは空き時間にボランティアとして行動してきたことが、時間をかけて調査し、仕事としてできることになんて有難いことという気持ちと、絶対に「変える」という責任を感じています。

―市政に進まれたきっかけは何だったのですか。

田中さん きっかけは娘二人の不登校です。長女が中学3年生の時に突然不登校になりました。成績優秀、生徒会やクラブ活動に励み、成績表はオール5というような優等生タイプの娘でしたが、突然運動会の日に頭痛が始まり、本人も家族も青天の霹靂で何も分からない状態。その後も頭痛腹痛が続き、病院に行っても「身体に問題はない」と。しかし、状況は悪化するばかり。不調は続き、原因が分からず、まずは母自身が、心療内科が開催する「親子関係セミナー」に行ってみました。そこで「まずは親が変わらねば」と気づきました。

次女には生来コミュニケーションが苦手なところがありました。普通学級ではなじめないことも多く、小学高学年からは特別支援学級に入りました。娘が不登校なのは、障がいがあるから「自己責任」だと、問題提起することではないと思い込んでいたのです。でも「次女も長女も同じ不登校じゃないか」と気づいたのです。

 

我が子の不登校から、「おかしい」に溢れている現実に気付いた

 

―お子様の不登校から活動がスタートしたのですね。

田中さん 我が子の問題で不登校のことを知るにつれて、これは大変な問題だと分かりました。全国の高校生不登校児童者数は約5万人(2017年度文科省発表)、兵庫県下の公立高校で830人、小中学校を合わせるとすごい数になることが分かります。各クラスに2人程度の割合でいるのではないかとされています。不登校の原因は様々で、子ども達自身も、周りの人間も「何か分からない」場合が多く、こうしたら解決するというような簡単な答えはありません。それぞれのしんどさがあって、大人が決めつけた枠の中からはみ出してしまう。

それまでは政治のことも全然わからない、仕事や育児に忙しくて期日前投票にもいけないというような有様でしたが、元来の「おかしい」と思ったことは黙っていられない性格もあり、声をあげることができました。

 


画像:何でも相談できるお母さんのような田中さん/取材時

 

不登校の子どもと親の居場所『トコトコくらぶ』を立ち上げる

 

―どのような活動につながっていったのでしょうか。

田中さん 長女の不登校から、私もメンタルヘルスケアについて学び、同じような悩みを持つ人から相談を受けるようになりました。長女は紆余曲折ありながら、通信制の高校から予備校に通い、ゆっくりとパワーを貯め自ら大学に進学することを決めました。長女の中学のクラスメイトにもう一人不登校の女の子がいました。家にもよく遊びに来てくれて、「おばちゃん~」と色々な話をしてくれていました。

娘は東京へ進学し、彼女は地元高校から就職されたので、交流は無くなっていましたが、メールなどのやり取りはあったようです。しかし、2014年春、18歳の時に亡くなりました。その事実を亡くなって半年後にご家族からの連絡で知り、とてつもないショックを受けました。

その女の子のことがずっと気にかかっていて、「いつか、しんどさを抱えた子どもたちの居場所をいつか作りたいなぁ」と漠然と思っていたのです。なんてことをしてしまった、間に合わなかったと大後悔しました。命に直結していることに「いつか」なんて悠長なことではダメだ、実行しないといけないと「居場所」作りを決心したのです。

そこからご縁があり、ちょうど家の近くに自治会館があり、お隣の社会福祉協議会の地区会長に相談したところ、直ぐに空いている部屋を貸してもらえることになりました。不登校の子どもと親の居場所『トコトコくらぶ』の誕生です。ちょうど2019年10月に開室から5年を迎えました。今でも毎週金曜日の午前中に不登校児童生徒だけでなく、その親が集まって悩みや情報を共有し、思いを吐き出す場所として運営しています。

 

子どもが学校に合わせるのではなく、学校が生徒に合わせていく教育へ

 

―教育改革を掲げる田中さんですが、どのような改革なのでしょうか。

田中さん 今の学校教育では、頑張りすぎて疲れてしまった子ども、集団生活が苦手な子ども、いじめや発達障害、学習障害など「人との違い」を持った子ども、他にも様々な理由で不登校になった子どもたちにとって、あまりに選択肢が少ない。

フリースクールや居場所など少しずつ増えていますが、不登校になる子どもたちも増えると予想されます。その子どもたちの学ぶ権利をどう守るのか。フリースクール運営もどう頑張っても公立以上の費用がかかりますので、どんな家庭でも利用できるわけでもなく、全員の子どもを救済できるわけではありません。

これでよいのでしょうか。私は、日本の公教育が生き残れる唯一の方法は本物のインクルーシブ教育だと考えています。

―インクルーシブ教育とは何でしょうか。

田中さん どんな子どもも分け隔てない教育です。現在の教育現場では、個性を細分化して「障がい」と名付け、区別という「排除」を当たり前のようにしています。「問題ある子ども」とレッテルを貼って排除しているのです。人として、当たり前の個性として、色々な人がいる。「障がい者」「問題児」として扱われないシステムに変わっていかなくてはいけないと思います。

先生や学校の都合で、“はみ出るものは排除する“ということは教育ではないと思うのです。また学校は「勉強する所」だけではありませんよね。様々な人がいて当たり前、命に優劣はないという中で育たなければ、大人になったときにどんな価値観を持つか不安です。「グローバルな社会」「グローバル教育」を指針として掲げながら、教育現場は全く矛盾している現実を変えなくてはなりません。

学校という箱に子どもを適用させるのではなく、子どもに合わせた学校にしていかなくてはならない。指示されたことをするのではなく、自分で考え、否定されない。そんなみんなが安心して通える学校がこれからの教育に必要だと考えています。

 

「居場所をつくる」が私の原点

 

―今後の活動予定を教えてください。

田中さん 「居場所作り」はこれからもずっと私のテーマです。今回事務所を立ち上げることになったので、事務所兼、居場所にしたいと思っています。「トコトコくらぶ」は週に1度の午前中という短時間だったので、いつでも、誰でも気軽に来れる場所を作りました。

居場所がない子どもだけでなく、孤立した若者、高齢者、母親、シングルマザー、障がい者、全て「他人事」ではありません。「このままではいけない」との初心を忘れず、生きづらさを抱えた人を変えるのではなく、社会の制度を変えること、みんなが生きることを諦めない社会にしたい。その実現のために全力で取り組みたいと思います。

 

 

Profile

田中 あきよさん
西宮市議会議員 関西無所属ネットワーク
兵庫県西脇市出身
長女と次女の不登校経験から、不登校の子どもと親の居場所「トコトコくらぶ」を立ち上げる。
健常な人だけでなく障害を持つ子どもからおとな、発達障害と言われる理解されにくい特性を持つ人たちが、生きていきやすい街にするため「生きづらさゼロの西宮」をめざす。西宮市議会議員1期目

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【トコトコくらぶ 問い合わせ先】
樋ノ口地区社協ボランティアセンター 080-6132-3730(金曜日9:30-12:00)

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